ご挨拶
昭和大学歯学研究科 教授 立川 哲彦
口腔癌は、ヒトに発生する全体の癌の約5%を占めています。現在、その口腔扁平上皮癌は年々増加の一途を辿り、その死亡率は乳癌や子宮癌よりも高く、食道癌に継ぐ予後の不良の疾患であります。2015年には口腔癌の罹患率は現在の約4倍になると予想され、口腔癌の撲滅は緊急の課題とも言えます。
口腔癌が難治性である理由の一つに、癌の組織病変が細胞集団の中で著しい多様性を示すことが挙げられます。例えば、細胞分化度、細胞増殖度、さらには浸潤度などが異なる細胞群が混在し、これらはさらにそのステージにより大きく異なります。このような細胞の多様性は本来の病変の診断、進行および予後判断を困難にし、さらには治療法の選択にも影響を及ぼします。そこで、病変を形成する細胞の性状解析が重要となり、その中でも細胞の分子的解析が必要となります。また、進行癌の場合では術後の嚥下、味覚、言語機能が著しく障害させるために、患者のQOLの低下に結びついてしまうことがさらなる問題点といえます。
このような背景の基に昭和大学歯学部では、従来から口腔癌撲滅を目指すべく、口腔癌の発生から進展、治療、予後因子、術後回復のリハビリテーションまでを幅広い科学的エビデンスを捉えるため、多くの研究者が特徴ある研究を遂行してきました。幸いに平成20年度に文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に選定され、「分子的理解に基づいた口腔癌の先端的研究」をメインテーマとして、本大学歯学部の総力を挙げ、分野を越えた先進技術を有機的に応用し、個々の分野を密接に関連付け、口腔内環境の変化を含む口腔癌の発症機序の解明、発生機序の理解に基づいた診断・治療法の確立、そして、術後機能障害予想に基づいた再建法の開発、さらに障害発症機序の理解に基づいた包括的リハビリテ-ション歯学の体系化までの研究を総合的に推進する研究プロジェクトを企画し、スタートさせました。
本プロジェクトには68名の研究者が参加し、1)前癌病変を含む口腔癌の発症メカニズムと口腔内環境の関連解明による早期診断システムの確立、2)分子的理解による治療体系の確立と機能障害予測に基づく再建法の開発、および3)口腔癌治療後の顎口腔機能障害発症機序の理解に基づいた包括的リハビリテーションの体系構築の3つのサブプロジェクトを組織して研究が進められており、口腔癌撲滅に向け、本プロジェクトに邁進する所存でございます。
News & Topics
| 【2010.08.01】 | 昭和大学口腔癌包括的研究センターのHPを公開しました。 |
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