食道の疾患
 食道疾患は機能性障害から悪性疾患まで幅広く、診断が難しい臓器の一つです。また、治療法も多岐にわたり、正確な診断から適切な治療の選択につながる連携が特に重要となるため、内科医と外科医が一緒のチームで診療にあたる私たち消化器センターが非常に得意とする分野です。以下、代表的な疾患をご紹介します。

1)食道がん
 食道がんは食道粘膜から発生するがんです。アルコールやタバコなどが原因と考えられており、男性に多い傾向があります。初期には自覚症状はなく、バリウムによる造影検査でも発見することは困難です。当センターでは、超拡大内視鏡を用いて、1mmの大きさのがんを発見することに成功しています(図1)。早期のがんには内視鏡的粘膜切除術(EMR、図2)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD、図3)などの内視鏡的治療を、進行したがんには手術(胸腔鏡、開胸)、化学療法、放射線照射を組み合わせた集学的治療を行います。
 進行すると予後が良くないがんの一つですので、飲酒、喫煙などの食道がん危険因子が思い当たる方は、無症状でも内視鏡検査を受けましょう。
1mm食道癌
EMR_食道 ESD_食道

2)食道-胃接合部がん
  食道と胃の接合部(つなぎ目)周辺にできるがんで、胃側の粘膜から起こると考えられています。胃酸の逆流が主な原因とされています。近年増加傾向にあり、食生活の欧米化や肥満などが影響していると考えられます。
詳しくは、胃の疾患のページでご説明します。

 食道アカラシアは食道の弛緩不全(柔軟性を欠いて狭くなり、食べ物が通らなくなること)が主体の機能性疾患であり、従来は外科的治療(手術)が根治的治療の主体でした。
 しかし、当センターの井上晴洋教授が世界に先駆けて開発した 経口内視鏡的筋層切開術(POEM:per‐oral endoscopic myotomy)は、安全性、根治性、低侵襲性を兼ね備えた治療法であり、高度先進医療として認められています。現在までに国内外で1000名以上の患者さんに治療を行い、非常に優れた効果を挙げています。POEMを受けられる医療機関は国内で数施設と限られますので、アカラシアが疑われた方は当センターへご相談ください。
 さらに詳しいご説明は、www.achalasia-POEM.net(http://www.achalasia-poem.net/index_jp.html)をご覧ください。

4)逆流性食道炎 ― 経口内視鏡による新しい低侵襲治療:ARMS
 逆流性食道炎は、胃酸を含む胃液が食道に逆流すること(胃食道逆流症)で生じます。胸焼けやこみ上げが主な症状です。食道裂孔ヘルニアなどがあり、噴門(胃の入り口に相当し、食べ物が通るとき以外はしっかり閉じて、逆流を予防します)が正常に働いていない場合に起こりやすい疾患です。食道粘膜の保護と胃酸分泌の抑制が治療の基本ですが、下部食道腺癌が発生することがあるので、注意が必要です。
 通常は、胃酸の分泌を抑制するお薬を服用していただくことが多いのですが、根本的な治療ではなく、内服を長期間続けなければなりません。また、内服治療で症状が改善しない場合もあります。
 当センターでは、内服治療で改善しない難治性逆流性食道炎に対する新しい根治的かつ低侵襲治療として、経口内視鏡的に噴門形成を行う『内視鏡的噴門粘膜切除術ARMS:Anti-reflux mucosectomy、図4)』を行っており非常に優れた成績が得られております。
ARMS_内視鏡
詳しくは、ARMSのページをご覧ください。

5)食道粘膜下腫瘍
 食道がんは粘膜から発生するのに対し、粘膜の下にできる腫瘍が食道粘膜下腫瘍です。自覚症状に乏しく、しばしば検診の造影検査で発見されます。一般的には手術が行われますが、良性腫瘍であることが多いため、当センターでは内視鏡的粘膜下腫瘍摘出術(SET:Submucosal endoscopic tumor resection)を積極的に行っていますInoue H, Ikeda H, Hosoya T, et al. Submucosal endoscopic tumor resection for subepithelial tumors in the esophagus and cardia. Endoscopy 2012; 44(03): 225-230。ぜひ、外来でご相談ください。