主任教授ご挨拶

稲垣克記 顔写真
昭和大学整形外科
主任教授 稲垣克記

 昭和大学医学部整形外科学教室は昭和3年に開講し、全国80大学の中で9番目に古い歴史と伝統を有する講座です。東京大、京都大、九州大、名古屋大、新潟医専、女子医専、慶応大、慈恵医大の次に我が昭和大(当時の昭和医専)の整形外科が名倉英二教授(九州大出身)により開講されました。以降第2代教授松丸寛(名古屋大)第3代川島弥(東京大)第4代上村正吉(昭和医専)第5代藤巻悦夫(昭和医大)第6代宮岡英世(昭和大)各歴代教授がその重責を果たされ、現在では関連病院30、同門会員550名、医局員120名の教室に発展して参りました。私は、昭和大学医学部大学院卒業のはじめての科長という事になります。このような伝統と歴史の重責を感じる日々ですが、私は1997年から1999年までの2年間米国の名門メイヨークリニックで基礎と臨床を学んできました。その後も、ほぼ毎年講演に招待されたり新しい技術と知識を吸収するため渡米しています。伝統を継承する事は大変なことですが、時代はどんどん先に進むのでそれだけでは相対的な退歩です。時代にみあった新しい治療法も必要となります。最近の医学の進歩は目覚ましく、新たな高度先進医療がもたらした福音は数多くあります。われわれの教室における代表的なものを紹介しましょう。

1. スポーツ医学

 オリンピック選手のようなトップアスリートに関節鏡視下や最小侵襲で手術を行うことにより早期にスポーツ復帰が可能になりました。野球肘や靱帯損傷、サッカー選手の膝の靱帯損傷や障害がこれらの対象になります。われわれの教室ではWBCをはじめとした野球、サッカー、プロテニスプレーヤー、アイスホッケーなどナショナルチームドクターとして活躍しています。

2.人工関節

 関節リウマチや年齢に伴う変形性の股関節症や膝関節症に人工関節を行い20年以上の長期にわたり成績が安定するようになりました。近年、さらに肘関節や肩関節、足関節、手指の関節にもデザインと素材に優れた人工関節が出てきています。股関節や膝関節ほどの歴史はまだありませんが、肘関節は15年の安定した成績がでてきました。また、股関節や膝関節ではセメントを使わずに小切開で手術後、早期に歩行訓練や関節を動かす訓練が可能となりました。

3.再生医学

 再生医療、遺伝子治療の進歩により骨・軟骨の再生や筋・腱、神経の再生に関することがわかってきています。まだ研究の段階ですが近いうちに臨床応用される骨髄幹細胞から分離した細胞の移植による再生療法により、今まで行われてきた手の外科領域の血管付き骨移植による骨再生や、股関節や膝関節の骨切り術に伴う軟骨再生が飛躍的に活性化される可能性が出てきました。脊髄や神経の再生も同様です。

 このように、医学の進歩により多くの福音がもたらされている中で一番大切なことは、自然経過を含め疾病をよく理解する事です。手術はあくまでこの人間のもつすばらしい自然治癒力を少しだけ手助けする手段にすぎません。日常生活のなかにスポーツや運動療法を取り入れ、健康を維持するということがとても重要なことといえるでしょう。

平成23年 昭和大学医学部整形外科主任教授 稲垣克記