漏斗胸の治療(Nuss手術)


 漏斗胸に対する手術は、以前は胸骨挙上術、胸骨翻転術、prosthesis implant法の3つに大別されていました。小児では異物を用いるprosthesis implant法や侵襲の大きい胸骨翻転術は避けるべきであるとの考えから,われわれは独自の肋軟骨ブリッジによる胸骨挙上術を積極的に行ってきました。しかし、胸壁前面にできる手術創は如何に小さくしても目立つものでした。1998年にアメリカのNuss先生が今までとは全く違った発想の手術法を発表し、従来の手術よりも侵襲が少なく、整容性も優れていることから、現在全国に爆発的に普及しています。
 私は数年前よりこのNuss手術を行っています。ここでは手術法を分かり易く解説し、手術後の管理や手術時期に関しての当科の考えを示します。

手術方法:

 基本的には手術用インプラント(金属バー)を陥凹した胸骨の裏に通し、下図のように180度回転させることにより陥凹した胸骨を前方に押し出す方法です。この矯正された状態で約2年経つと、手術によりこの金属バーを抜き去ります。その後は胸骨の再陥凹は見られません。手術創も従来の目立つ胸壁前面ではなく、胸壁の両サイドになり、腕を下げた状態ではまったく分かりません。手術時間も従来は4時間程かかっていましたが、この方法だと約1時間で行えます。

Nuss D, et al: A 10-year review of a minimally invasive technique for the correction of pectus excavatum.
J Pediatr Surg 33: 545-552, 1998 より引用

術後管理:

 術後の痛みに対する管理は、年長児では硬膜外麻酔、年少児ではPCA(静脈内へ持続的点滴を確保し、そのルートより決まった量の塩酸モルフィネを注入する方法で、患者が痛みを感じる時に、器械のボタンを押すことで自動的に静脈内へ注入されます。)で行います。この方法により術後の痛みは、ほぼ完全にコントロールされます。約3日間ほどこの方法で痛みをコントロールすると、その後は痛みは軽減します。

術後安静:

 術後3日間はベッド上で仰臥位で安静を保ちますが、その後の3日間でベッドを挙上し、その後の1週間で歩行および退院の準備を行い、術後2週間目に退院します。

運動復帰の目安:

 術後1ヵ月をかけて術前に行っていた状態へ戻すように指導しています。

手術の時期:

 漏斗胸の手術時期に関しては、異論の多いところです。漏斗胸は10年20年の長い目でみると、労作時の息切れなどの症状が出現しますが、年少児ではほとんど症状がありません。小児期で最も問題となるのは、胸壁変形による「いじめ」「劣等感」「消極的な行動」などです。これらは集団生活が始まると起こってきます。この精神的な問題を解決するには、団体生活を行う以前に漏斗胸を治しておく必要があります。しかし、早い時期に手術を行うと術後胸壁の再陥凹が起こる頻度が高くなります。従って当科では、幼稚園に入園する前に手術を行うことを勧めています。すなはち5才頃が手術時期と考えています。

術前術後の胸壁写真

手術前の胸壁変形 手術後の胸壁

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