陰嚢水腫



「陰嚢水腫」って何だろう?

 陰嚢水腫はそけい部(下腹部)あるいは陰嚢部に発生する水腫(水で満たされた袋)です.その原因は,そけいヘルニアと同じく,腹膜鞘状突起の開存にあります.腹膜鞘状突起がお腹から出てくる所(内そけい輪部)が大きいと,お腹の中の臓器(多くは腸)が出てきてヘルニアとなりますが,小さいとこれらの臓器は出ることができません.しかし,お腹の中には大なり小なり腹水という水があります.この水が内そけい輪部の腹膜鞘状突起の細い開存部分を通って陰嚢内の鞘状突起の袋に貯まり,陰嚢水腫となります.また,精索水腫という言葉がありますが,これは貯留の部位が,睾丸まで到達していないもので,睾丸まで到達している陰嚢水腫と区別しています.しかし,ほとんど同一の病気ですので,ここでは陰嚢水腫としてお話しします.つまり,陰嚢水腫は,そけいヘルニアと兄弟のようなものだとお考え下さい.
 この病気は大きく2つのタイプに分類されます.一つは交通性で,もう一つは非交通性です.これはお腹の中と水腫の中とがつながっているか,どうかで分類し,つながっている場合を交通性と呼び,そうでないものを非交通性と呼びます.一般に陰嚢水腫は何もせずに経過をみるだけで治るといわれていますが,この陰嚢水腫は実は非交通性の水腫を意味しています.非交通性の水腫は1歳までに治癒する可能性が高いため,治療する必要がありません.一方,交通性水腫は1歳を過ぎても治癒することは少なく,治療の対象となります.
 症状は,陰嚢やそけい部が膨れることですが,痛みは伴いません.また,球状で睾丸が3つあるように見えたりします.この水腫が1日のうちで大きさに変化があるような場合(多くは朝は小さく,夕方には大きくなる)は交通性で,変化しないのは,非交通性の可能性が強いでしょう.
 診断に以前はライトを照らして透光性をみたり,針で水腫を穿刺して内容を確認するようなこと(少なくとも穿刺することは百害あって一利なし)が行われていましたが,最近では超音波検査を行えば簡単に診断できるようになりました.さらに交通性,非交通性の診断もこの検査で容易に行えるようになっています.また,陰嚢水腫をそけいヘルニアと間違えて,お腹の中に還納しようと試み,還納しないためにヘルニアの嵌頓として来院されることもあります.このような場合も超音波検査を行えばすぐに診断でき,お子さんに苦痛を与えずにすみます.

陰嚢水腫の超音波像
精索水腫の超音波像

 いずれにしても水腫の場合は,そけいヘルニアのように嵌頓になる可能性は非常に少なく,1歳までは経過をみるのが普通です.



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