停留精巣(睾丸)について


停留精巣とは?

 精巣はおなかの中で形成され、下腹部(鼠径部)へと下降し、最終的には陰嚢の底部まで降ります。ところが、その途中で何らかの原因で下降しなくなることがあります。この状態を停留精巣(睾丸)と言います。
 陰嚢はいわば車のラジエーターの働きをするものです。精巣は体温よりもやや低い温度で精子を造るため、うまく冷やされないと精子形成能が悪くなります。また、停留精巣の状態だと精子形成能ばかりでなく、睾丸腫瘍ができることもあります。ちなみに正常と比べて停留精巣の悪性腫瘍になる確率は数十倍になると言われています。

当科の治療方針

 生まれてから1歳半くらいまでは、精巣は自然に下降する可能性がありますが、1歳を過ぎると精子を造る細胞の変性が起こってきます。従って、1歳までには手術で精巣を陰嚢内に降ろしておく必要があります。1歳までに精巣が陰嚢内へ下降しない場合は手術を考えましょう。
 外来では超音波検査で精巣の位置、大きさなどをチェックします。触診で精巣を触れることができない場合でも、超音波検査で見つかることが良くあります。それでもはっきりしない時には、MRIなどの検査で探します。これらの検査をしても分からない場合は後で述べる術中腹腔鏡で確認します。
 精巣が高い位置にある場合でも、時に陰嚢内に下降していることがあります。これは移動精巣と言うもので、精巣の固定が悪いためにリラックスした時には陰嚢内まで下がっていますが、緊張すると上がる病態です。お風呂に入った時などリラックスした状態で精巣が陰嚢内にある場合はこの状態が多いと思って下さい。いずれにしても判断は難しいので、陰嚢内に精巣がない場合は、外来受診をお勧めします。

入院期間

 当科では基本的に2泊3日のコースで手術を行っています。手術前日に入院し、診察、説明をうけて翌日手術を行い、問題なければ手術の次の日に退院します。ただし、精巣が上にあり、下まで十分に降ろすことができず、陰嚢に固定しても緊張のために精巣が上に引っ張られる場合などは、少し入院期間が延びることがあります。

手術方法

 手術は全身麻酔で行います。手術時間は精巣のある場所にもよりますが、1時間から1時間半です。まず下腹部の皺に沿って約2cmの皮膚切開をくわえ、精巣を探し、陰嚢まで降ろします。次に陰嚢に約1cmの皮膚切開をくわえ、精巣を入れるポケットを作り、精巣を引き下ろしてポケットの中に固定します。精巣がお腹の中から下降していない場合は、手術の時にお臍の下に約5mmの皮膚切開をおき、そこからカメラ(腹腔鏡)を入れておなかの中の精巣を探すこともあります。この場合は30分程余計に時間がかかります。また、精巣がほとんど発育しておらず、陰嚢内まで降ろしても発育の見込みが望めないような場合は、将来の悪性化を考えて精巣をとってしまう手術(除睾術)を行う場合もあります。しかし、当科ではできる限り精巣を取らないよう試みています。

下腹部に2cmの傷
精巣を周りから剥がす
陰嚢にポケット作成
精巣を引き下ろして
陰嚢に固定
(Rob&Smith’s Operative Surgery: Pediatric Surgery より引用)

手術後管理

 当科ではすべての手術に体内で吸収される糸を使っていますので抜糸の必要がありません。日常生活は特に制限する必要はありません。翌日からお風呂に入ることもできます。退院後は外来で手術創や精巣の発育状態をチェックします。
 停留精巣は精巣のある場所、発育の程度などによって術後の経過が変わってきます。手術で精巣が陰嚢内へ降りても、再び上がったり、発育が悪くて萎縮してしまうこともあります。不幸にして、片方の精巣が消失しても、もう片方が正常であれば生殖機能に問題はありませんが、両側停留精巣の場合はより慎重な対応が必要となります。早めに相談するように心掛けましょう。


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