臍ヘルニア(でべそ)の治療



 臍ヘルニアとは、いわゆる「でべそ」のことです。この治療法として、昔はテープにより左右の皮膚をよせてヘルニアが出ないようにする方法がありました。この方法は確かにヘルニアを早期に治す効果がありましたが、昔のテープや粘着剤の粗悪さから、皮膚炎を起こすことが多く、徐々に行われなくなりました。
 もともとこの疾患は、生後3ヵ月頃に「でべそ」の程度が一番強く、その後、徐々に小さくなり、1才頃までには約80%が自然に治ることが分かっていました。また、そけいヘルニア(脱腸)のような嵌頓を来すことはほとんどないことから、1才まではそのまま何もしないで経過を見て、自然閉鎖しない場合や閉鎖はしたが余剰皮膚のために醜形をきたす場合は、手術を行うようになりました。われわれもこの方針で行っていました。
 しかし、経過観察中に他人から「でべそ」の存在を指摘されるなど両親の精神的負担が大きいことや,ヘルニアの増大により「おへそ」が膨隆し,皮膚にたるみが生じ、そのため自然治癒後に「おへそ」の醜形を残すこと,さらにその醜形に対して美容的観点から手術を要することなど多くの問題がありました。そこで「おへそ」に醜形を残さず、早期に自然治癒を促すことを目的に、早い時期からスポンジ圧迫による保存的治療法を行うようになりました。

ここでは、当科で行っている方法を紹介します。

 スポンジ圧迫法で使用するものは,スポンジ(ニチバン社製 Elaston No.125)とフィルム(3M社製 テガダーム 6×7cm大)です。Elastonは片面に接着剤がついたスポンジシートで,「おへそ」の陥凹の大きさに切って使用します。テガダームは外からの水分は通さず,内側からの汗などは放散させる特徴を持つ透明なフィルムで,皮膚に付着させる片面に接着剤が着いています。写真のように適当な大きさに切ったElastonをテガダームの中央に接着剤どうしをあわせるように貼り付けます。

 脱出したヘルニア内容を還納させた後,Elastonを「おへそ」に押し当て圧迫しながらテガダームを貼ります。このとき皺ができないように十分注意します。皺がなくテガダームを貼ることができれば,その後入浴しても全く問題ありません。

 この方法は、外来で1〜2回指導を行った後、原則として自宅で母親が行います。自宅では3日毎にElastonとテガダームを交換します。毎日お風呂に入りますが、3日目の交換時は入浴前にフィルムをはずし、「おへそ」をきれいに洗います。接触性皮膚炎が生じたときは軽快するまで一時中止します。軽快後、再度始めます。
 スポンジ圧迫法による治療効果は,治療開始後1週間ほどで現れます。まず、「おへそ」の膨らみが平らになり、皮膚が少し黒く、硬くなってきます。こうなると治りつつある証拠です。多くの場合は2ヶ月で自然な形態で治ります。

治療前 1週間後
2ヵ月後
 ここにスポンジ圧迫法をした場合と無治療経過観察の場合を比べたデータがあります。
 スポンジ圧迫法の治療期間は29〜279日(平均79日)で、治療開始が生後2ヵ月頃であることから、生後4ヵ月頃には治癒していたことになります。また、無治療経過観察した場合に自然治癒が認められるのは、生後約8ヵ月で、このことからスポンジ圧迫法は自然治癒を促す効果があるといえます。

 当科での臍ヘルニアに対する治療方針は、「おへそ」が激しく膨らまないうちに、できるだけ早くスポンジ圧迫法を開始することを勧めています。

 ただし、スポンジ圧迫法は、自然治癒を促す治療法ですので、自然治癒が望めない時期には、手術適応があると考えます。いつ頃まで自然治癒が期待できるかということは諸家により意見が分かれるところですが、当科では2歳以上は、自然治癒が望めないと考え、手術をすすめています。

(参考文献)
1. 佐々木潔、渡辺泰宏、土岐 彰: 臍ヘルニアの醜形を残さない保存的治療法. 小児科 43: 1482-1486, 2002




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