(答え)母乳栄養で育った児は,将来の肥満のリスクが低いとする多くの疫学調査の結果がありますが,それには否定的な意見もあり現在のところ一定の結論は出ていません.
母乳栄養で育った児は、将来の肥満発症リスクが軽減されるという疫学調査の結果が数多くあります。しかし、これらの報告には多くのバイアスが存在するため、バイアスを考慮して質の高い報告に限定した場合にはその関係性はないかあっても極軽度と考える人もいます。実際、母乳栄養による肥満抑制効果を検討した無作為化比較試験では、その関係性を証明することはできませんでした(完全に否定するものではありません)。そのため、現在も結論は出ていないというのが現状です。
例えばその他にも、乳幼児突然死症候群,急性中耳炎や重症下気道炎などの感染性疾患,アトピー性皮膚炎や小児喘息などのアレルギー疾患など、様々疾病リスクが母乳栄養によって軽減されるとの疫学的な調査結果が報告されていますが、詳細なメカニズムは明らかとされていないものも多くみられます。このような生後早期の栄養環境と疾病リスクの変化を、DOHaDを用いて説明できる日が近い将来やってくるかもしれません。
以下関連書籍です。
① 中野有也.母乳研究最前線 母乳哺育とDevelopmental Origins of Health and Disease 日本母乳哺育学会雑誌
2013年7巻1号 Page35-41.2
②中野有也、板橋家頭夫.【Q&Aで学ぶお母さんと赤ちゃんの栄養】Q&A小児科編 人工乳 人工乳は将来の肥満の原因になりますか? 周産期医学
2012年42巻増刊 Page193-194.
③中野有也、板橋家頭夫.【メタボリックシンドロームと周産期管理】母乳栄養はメタボリックシンドロームのリスクを軽減できるのか? 周産期医学 2012年42巻7号
Page911-915.