周産期医療環境整備事業-概要・内容
事業の概要
周産期医療の問題としては、①昼夜を問わない分娩やハイリスク分娩・ハイリスク新生児に対応する長時間連続勤務体制を、少ない数の医師が自己犠牲の下で支えているという現実、また、②分娩の安全神話と周産期医療の現実との乖離によるクレームや訴訟の問題、③分娩取り扱い施設の減少による大病院での分娩数の激増とNICU入院新生児数の激増、④大学病院内では非正規雇用の医師が多く存在していること、⑤若手産婦人科医・小児科医の中の女性医師比率が急速に上昇していることなどが挙げられる。
このような中、本周産期センターは、まだまだ不十分であるものの、他の施設と比較すると人員も充実している方で、地域との連携も良い。それ故、当センターは他施設のモデルとなる若手医師の教育環境整備や女性医師の就労支援を行っていく責任があり、また、周産期医療が訴訟リスクの高い過酷な労働という既成概念を打ち破り、そこに勤務する医師にとって働き甲斐があり、満足度の高い診療科にしていくためどのような改革が必要かを具体的に検証するには最適な施設である。
事業の内容
本プログラムでは、以下の4点を主要な課題とした。
[1] 若手医師の教育環境の整備
- 学術・研修活動の促進:各種講演会や研究会の開催(周産期管理研究会、すこやか臨床遺伝セミナー、昭和大学小児科医会 )、参加支援
- 教育用シュミレーターを用いた実習
- 新生児蘇生法講習会の開催
[2] 女性医師の勤務継続・復帰支援
- 女性医師の短時間勤務正規雇用制度の設立:女性医師募集
- 育児休暇後の女性医師の復職に向けた再教育システムの構築:女性医師募集
- 院内保育所の設置検討
- 院外の保育施設の利用料金の補助
[3] 医師の負担の軽減
- 妊産婦・新生児管理のための新しいコンピューターシステムの開発
- 周産期臨床データ管理者及びプログラマーの雇用
- 指導医の夜間緊急出勤に対する指導手当の支給
- 周産期臨床心理士による異常胎児・新生児をもつ両親への心理ケア
[4] 地域の周産期医療システムの再構築
- 妊婦に配布するパンフレットの共通化、地域連携パスの作成
- 比較的軽症のNICU入院症例について地域の小児科クリニックでフォローが行われる体制を構築
- 病院間のインターネット会議システムの導入