簡易懸濁法は

はじめに

倉田なおみ

昭和大学 薬学部 薬剤学教室 准教授 倉田なおみ

略歴

薬学部が6年制になり、臨床薬剤師の活躍は医療施設、保険薬局のみならず在宅、福祉関連施設、企業、行政、教育機関など幅広い領域で必要となり、大いに期待されています。

昔は処方箋に基づく薬剤調剤業務が中心でしたが、昭和63年(1988年)の診療報酬改訂により、病院薬剤師のクリニカル・ファーマシー業務に対する評価が入院調剤技術料(診療報酬点数100点)として請求できるようになりました。薬剤師が調剤室から飛び出し病棟の患者さんの元へ行く原動力となりました。さらに、平成9年(1997年)4月の薬剤師法の改正で情報提供義務の規定が施行され、それまで十分ではなかった薬の説明を文書を用いて服薬指導するようになりました。現在は当たり前になっている薬品情報提供用紙はこれをきっかけに患者さんに渡すようになり、それと共に薬剤師自身の実力も向上したように思います。

それ以来10数年実施してきた服薬指導ですが、今後は服薬支援に変貌すべきと思います。服薬支援とは、単に薬が正しく飲めるように説明をするだけでなく、薬が患者さんの体に入るまでを確認し、支援することです。例えば、脳卒中片麻痺の患者さんが薬の袋を開けられなかったり、関節リウマチで目薬がさせないなどがあれば薬を体に入れることができないことがあります。薬剤師はこれらの個々の患者の状況を把握し、「患者さんのより使いやすい薬への変更」や「患者さんの生活パターンにあわせた服薬回数への変更」「服薬するために必要な自助具の紹介」など、患者さんが間違いなく服薬できるような根本的改善策の考案が求められます。

経管投与においても同様です。薬が患者さんの体の中に入るまでをしっかりと見ることによって簡易懸濁法が誕生しました。従来の経管投薬法では様々な問題が発生していましたが、薬剤師はもとより誰からも問題視されませんでした。錠剤粉砕は慣例化しているため当たり前になっていましたが、薬物治療の番人である薬剤師として、粉砕による様々な問題を解決するために、有用で安全な経管投薬法である簡易懸濁法を推奨します。

臨床薬剤師が活躍する場所で、もっともっと患者中心の医療にするためにやるべきことはたくさんあると思います。今後もどうすればより患者中心になれるのか、皆様とともに追求していきたいと思います。

電話を発明したアレクサンダー・グラハムベルの言葉です。

時には踏みならされた道を離れ、森の中に入ってみなさいそこにはきっとあなたがこれまでに見たこともない何か新しいものを見出すに違いありません
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