設立の趣旨

 胎児期や生後早期の発達過程は、将来の病気のリスクを決定するwindow periodです。最近、この時期からのよりよい食育や成育環境を通して将来の疾病リスクを減ずること、さらに個々の遺伝的背景をもとに疾病リスクに対して早期から介入していく、いわゆる「先制医療」の概念が注目されています。「病気になる人を待つ」これまでの医療とは全く異なった「先制医療」が今後求められる時代がやってくると確信しています。
 しかし一方でこういった考え方のもとになっている「DOHaD」の概念を日々の診療に生かしていくことには困難が伴います。なぜならば、まず圧倒的にエビデンスが不足しており、それを臨床に生かす術が明らかではないからです。例えば、小児科医、とりわけ新生児科医は日常診療で早産低出生体重児を担当する機会が多いわけですが、①NICUでどのような管理を行うのがよいか、②どのようなタイミングで彼らをフォローアップし何を評価すべきなのか、③異常がみつかった児、リスクの高い児に対してどのように介入するのがよいか、がわからず手探りで診療にあたっているのが現状です。また、学問としてのDOHaD研究には、臨床家には難しい概念も多く含んでおり、臨床家が興味をもってもこの分野を勉強することに、二の足を踏む現状があるのではないかと思います。
 そういった背景のなか、発足したのが本会「臨床DOHaDセミナー」は、臨床のためのDOHaDをキーワードに積極的な活動を目指しています。ご興味のある方はぜひご参加ください。

       臨床DOHaDセミナー

          代表世話人 昭和大学医学部小児科学講座  中野有也


2016年12月01日