診療放射線技師は、放射線技術の専門知識を生かして、放射線や検査の説明、目的に応じた撮影、三次元画像などの作成や読影の補助、診療上の説明を受ける方へ判りやすい画像提供など、手術サポートおよび放射線治療などを行います。
また、病院内すべての放射線業務に関わるため、放射線機器や被ばくの管理なども重要な業務となります。
診療業務は、大きく分けて、画像検査部門、核医学検査部門、放射線治療部門に分かれています。これらの部門は直接患者さんと関わる仕事です。
しかし、放射線管理のような直接患者さんと関わらない仕事もあります。以下に病院での主な業務を示します。
診療放射線技師が携わる画像検査は、単純X線撮影、乳房X線撮影、歯科X線撮影、造影X線検査、骨塩定量検査、回診X線撮影、血管造影検査、X線CT検査、MRI検査、超音波検査、眼底検査などがあります。
単純X線検査とはX線を用いて体内の情報を画像化する検査です。レントゲン検査と呼ばれる検査です。主に胸部や腹部の検査が多いですが、外傷による骨撮影も行なわれます。
怪我や病気を診断するために最初に行われる検査として用いられる場合が多い検査です。
微量のX線を用いて人体に照射しているため、複数枚撮影してもほとんど人体への影響はありません。
X線を人体に照射すると、骨や内臓の構造物によって吸収が起こり、その吸収差によって画像化します。そのため体表面についたものは検査の妨げとなるため、検査着に着替えてもらいます。妨げとなる金属やプラスチックなどが付いた物に以下の物があります。
・装飾品(ネックレス、ピアスなどのアクセサリー)
・金属の入った下着(ブラジャーなど)
・ズボンやファスナーの付いた衣類
・プラスチック類(ボタンなど)
・眼鏡、入れ歯、ヘアピン
・エレキバン、湿布、カイロなど
単純X線撮影を行なうときは、撮影する場所により呼吸を止めて行う場合があります。胸部撮影は、肺野を広く描出させるために吸気で撮影します。主に肺野や心臓の形態などを観察します。腹部撮影は、腹部を広く描出させるために息を吐き、横隔膜を上げて撮影します。腸管ガスや尿路結石などを観察することができます。骨撮影は骨折や脱臼、骨の変形、筋肉などの軟部組織を観察します。胸部や腹部に近い場所では呼吸を止めて撮影する場合があります。呼吸の影響を受けない部位に関しては呼吸を止める必要はありませんが、体の動きは得られる画像のブレとなるため、撮影する前に診療放射線技師が説明いたします。ご協力のほどよろしくお願い致します。
手術後や様々な理由で病棟から出られない患者さんに対してX線検査を行う場合はポータブル撮影を行ないます。ポータブル撮影とは移動型の単純X線撮影装置で検査を行うことで、病棟や手術室などでX線撮影が行なうことができます。検査する目的部位にカセッテを敷き、その上からX線を照射し撮影します。病室で撮影しますが、同室患者やお見舞いとして同じ病室にいても、2m程離れていればX線による影響はありません。
その他、不安や心配することがあれば診療放射線技師にご質問下さい。
乳房X線撮影は、触ってもわからないような早期の小さな乳がんを、白い影(腫瘤影)や非常に細かい石灰化の影(微細石灰化)として見つけることのできる検査です。
この検査は、専用の装置で乳房を挟みながら圧迫して撮影を行います。
乳房を圧迫しながら薄く広げることによって、少ない]線量で乳房の中がより鮮明に見えるようになります。
また、追加撮影として、拡大撮影や、3D画像(薄いスライスの画像)を撮影する事があります。
拡大撮影は、石灰化や腫瘤影のある部位を拡大して撮影することで、石灰化や腫瘤影の形状や、範囲を見やすくし、3D画像の撮影は、乳房に対して異なる角度から複数の撮影を行い、薄いスライスの画像をつくります。薄いスライスの画像では、乳腺の重なりが少なくなるため、乳腺がより観察しやすくなります。
X線を利用して、腰椎や前腕骨を撮影し、X線の吸収される割合から骨密度を測定します。 骨粗鬆症などで撮影します。
口の中にフィルムを入れて歯の撮影を行います。虫歯などを確認します。
歯科撮影の一つで、歯、顎関節、上顎洞などの広い範囲を全体的に確認したい場合に撮影します。
胃の検診でバリウムを飲んで撮影する消化管検査が有名です。他にも腎盂検査、胆のう造影検査、関節造影検査、気管支造影検査、脊髄腔造影検査、子宮卵管造影検査などさまざまな検査法があります。造影剤が用いられ、単純撮影では分からない臓器や病変を観察します。
病棟や手術室、救急室などに小型のX線装置を移動し、撮影を行います。
代表的な検査には心臓カテーテル検査があります。X線透視をしながら、カテーテルという管を目的の血管まで到達させ、造影剤を注入することで血管の流れを観察します。その場で、動脈硬化などで狭くなった血管を広げるなどの血管内治療も行われています。
CT検査は、X線を使って身体の断面を撮影する検査です。特に心臓、大動脈、気管支・肺などの胸部、肝臓、腎臓などの腹部の病変に関しては、優れた描出能が知られています。X線は身体の内部を通過しますが、組織や臓器によって通過しやすさは異なります。CTは通過したエックス線量の差をデータとして集め、コンピューターで処理することによって身体の内部を画像化します。X線を出す部分とX線検出器を対にして回転させ、患者の体の周囲を360度方向から連続的に
エックス線を当てるようにし、身体を "輪切り"にした断面像を構成します(図1)。私たち診療放射線技師は、その撮影方法、造影剤の注入タイミング、X線の被ばく線量のコントロールを行っています。最近は、造影剤で注射した針の抜針業務も積極的に行っています。現在のCT装置は1m以下でデータを収集できるので、そのデータより三次元画像を構築できます。3次元画像は病気や臓器を、立体的な画像として把握でき、診断に不要な物体を除去することができ、特定の骨や臓器を見やすく色分けできる利点があります。私たち診療放射線技師は、臨床にもっとも有効な形で画像を作成するのも仕事になります。
MRIとは(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)の略称です。 非常に強い磁石と電波を利用して、人体の様々な断面を撮像する検査です(図2)。様々な病巣を発見することができますが、特に脳や、脊椎、四肢、また子宮、卵巣、前立腺等の骨盤腔に生じた病変に関して優れた描出能が知られています。また、色々な病気の早期発見、診断にMRI検査は有効とされ研究が進んでいます。全身の検査に対応し、各部位のあらゆる方向の断層画像のほか、造影剤を使用しなくても全身の血管(MRA)や胆道系(MRCP)の撮像を施行でき、さらに目的に応じた造影検査も可能です。頭部、頚部、腹部、膝、肩、乳腺、心臓等の専用コイルを使用する事により、高速撮像が可能となり良質な画像を提供しています。また、最近では全身の拡散強調画像の撮像が可能で、特に頭部においては、早期の脳梗塞診断を行います。私たち診療放射線技師は、その撮影方法、画像コントラストの調整、造影剤の注入タイミング、を行っています。また、非常に強い磁場を持つ磁石を扱うため、安全管理も大事な業務の一つとなっております。
現在の医療では手術や治療を行うには、CTMRI検査が必須となってきています。また、非常に進歩が速い分野ですので、私たちも、研究会や学会に積極的に参加・発表し、最先端の医療を提供できるよう日々精進しております。
超音波を使用し、腹部や胎児の動きをリアルタイムで観察します。
瞳孔を通じて、眼底を観察します。眼底の病気だけでなく、全身疾患の検査にも有用です。
ガンマ線という放射線を放出する放射性核種を標識した放射性医薬品を人体に投与し、体外より測定装置(シンチカメラ・ポジトロンカメラなど)で画像化し、定量測定を行ったり、血液や尿などの試料測定を行ったりする検査です。
心臓(血流・代謝・交換神経・壊死など)、脳(血流・神経受容体など)など各臓器の機能を診断する上で重要な検査です。また、国内死因のトップである腫瘍などの診断(早期発見・転移診断など)にも有用な検査です。画像診断機器の発展は核医学画像の画質向上を可能とし、ワークステーションを用いた解析画像は診断能の向上に大きく寄与しています。核医学で得られる機能画像情報と他モダリティ(CT・MRIなど)で得られる解剖学的な形態情報の融合により高い臨床価値を持った画像を提供することできます。
SPECT装置・SPECT/CT装置・PET/CT装置を有しており、依頼科からの各種要望に応えられるよう、日々の臨床業務に努めています。
放射線治療は、手術や抗がん剤と同じようにがん医療に重要な治療法です。その目的は、放射線が細胞分裂を止める作用を利用して、病巣周囲の正常組織への影響をできるだけ少なくし、病巣にできるだけ大量の放射線量を投与して治療することです。近年では、高精度照射法の開発が進み、がん病巣への放射線集中性が飛躍的に高まった結果、比較的小さな病巣であれば、手術と同等の成績が可能になってきております。また、放射線治療を提供する側は、患者さんの全般的な安全性と快適性に配慮して、確実な位置決め照準と適切な投与線量を照射できるよう日々努力しております。
診療業務以外にもたくさん仕事があります。
患者の医療安全の確保に努めます。部署での医療安全管理者を担当し、委員会にて事故防止対策、感染防止対策を検討します。
放射線の取り扱いについては、公共性の安全を担保するために法令を遵守することが必須です。そのため、放射線機器の設置や使用する際には、国や都道府県に届出や許可が必要です。私たちは放射線が適切に使用されているかどうか定期的に放射線測定を行っております。また、放射線診療従事者に対しては放射線安全教育訓練や健康診断も行います。。
医療の質を維持、患者の安全を確保するには、日常点検、定期的な保守点検が必要です。放射線機器ごとに品質保証(QA)プログラムを作成し、品質管理(QC)を行っています。高度な知識と品質管理装置が必要になります。
医療では患者さんに最小の被ばく線量で最高品質の画像を得るようにしなければなりません。私たちは検査による放射線被ばくが適切であるかどうか検証しております。そして、より被ばく線量を低減するために日々工夫しなければなりません。これは私たち診療放射線技師の重要な仕事です。また、検査・治療に対する被ばくの相談にも応じておりますので、お気軽にお声がけください。
診療放射線機器に関連する備品は非常に高額です。診療放射線技師は管理者兼任し、管理を行います。使用機器の管理だけでなく、耐用年数や収益などを調査し、機器の新規導入などを企画します。フィルム、放射線医薬品、カテーテルなどの在庫品目を定期的に点検して、在庫統制を行います。
病院では、画像がデジタル化され、電子カルテによる診療支援が行われています。画像の保管システムや放射線情報システムを医療情報システムの構築に関し、企画、運用、管理を行います。
病院では質の高い医療を提供すると同時に、経営目標と経営目的を明らかにし、その実現のために医療経営理念を持って目標達成に取り組まなければなりません。統括放射線技術部で毎年自己評価(年報)を作成し、診療に伴う収益性、経済性、生産性、成長性、公共性、公益性、社会性の観点から医療分析を行い、経営改善に貢献します。
研修会・勉強会の参加、地域医療を重視した社会貢献および連携交流、官産学の研究者との連携、学生および研修生の受け入れと教育、関連資格の取得などがあります。