第53回日本周産期新生児医学会 DOHaD関連シンポジウムを終えて①

第53回日本周産期新生児医学会学術集会でのDOHaD関連シンポジウムを終えて
シンポジウム7「先制医療の実現に向けた課題 DOHaDを臨床に生かすために」

シンポジウム7 「先制医療の実現に向けた課題 DOHaDを臨床に生かすために」
座長:吉田 丈俊 (富山大学附属病院周産母子センター)   
   中野 有也 (昭和大学医学部小児科学講座)
1. 基調講演 児の長期予後に影響を与えるNICUでの環境
  中野 有也(昭和大学医学部小児科学講座)
2. 早産児・SGA児における臍帯血・生後末梢血検体を用いた網羅的メチル化解析
  鹿嶋 晃平(東京大学附属病院小児科)
3. 早産低出生体重児における将来の慢性腎臓病のリスクとライフコース・アプローチ
  平野 大志(東京慈恵会医科大学小児科学講座)
4. 小児肥満・メタボリックシンドローム予防における早期adiposity reboundの意義
  市川 剛(那須赤十字病院小児科))

 

【「基調講演 児の長期予後に影響を与えるNICUでの環境」の発表要旨】
①DOHaDの一般的な概念の確認
②児の長期予後に影響を与えるNICUでの環境として、「栄養管理」「腸内細菌叢」「ストレス制御」の3つをあげそれぞれについての知見を紹介した。
 1. 栄養管理・・・・一時的であっても発育不全を生じさせないことが重要
      単なるEUGR回避を目標とするのではなく、成長の質(体組成)を正常に近づけることが重要
 2. 腸内細菌叢・・・Microbiotaの重要性(プロバイトティクス、母乳栄養の推進)
 3. ストレス制御・・痛み/感染症などのストレス暴露を可能な限り減らすことが重要
          ディベロップメンタルケアの重要性の再確認
④DOHaDを臨床に生かすための課題
 1. 不利益な体質変化の回避(良好なNICUでの環境)
 2. すでに体質変化が生じた場合 可逆的であれば積極的な介入が有効?
                 原因となるエピゲノム変化と疾病リスクの把握
 3. 生じてしまった疾病リスクを早期にみつけ悪化させないようにすることの重要性
                 ハイリスク児のフォローアップをどうするか?

(感想)早産低出生体重児の救命率が向上するにつれて、彼らの長期予後の問題が重要視されるようになっています。DOHaDはそういった観点から、非常に興味深く重要な概念です、実際に最近は臨床医の間でもDOHaDの概念の重要性が知られるようになってきていますが、これを臨床の場に生かそうと思うと、それは容易な事ではありません。将来の疾病リスクにつながるような不利な体質を獲得しないためにどうしたらよいか、早産低出生体重児の中でも特にハイリスクな児をどのようなフォローアップし介入していくか、をまず考えていかなくてはなりません。将来的には、エピゲノム変化に可逆性のある時期に環境変化や食事、投薬などによって疾病リスクを軽減することができれば理想的ですが、いまだ道半ばです。このような臨床に即した議論を継続して行っていくことが大切であると感じました。


2017年07月20日