早産低出生体重児に対するNICU入院中のマッサージ

 早産低出生体重児、特に極低出生体重児は出生後に保育器に収容され、母親から離されてしまいます。児によって経過は様々ですが、通常は血液検査やその他の検査が施行される機会も多くありますし、感染症やその他の合併症を罹患するリスクも正期産正常体重児と比較すれば高いのが現状です。出生後長期にわたってこのようなストレス環境にさらされること自体が、早産低出生体重児の将来の疾病リスクに影響を与えているのではないかという議論があります。特に、早産低出生体重児は予定日にはLean body mass(筋肉量など)の減少、体脂肪率の増加など、体組成の変化が生じていることがわかっていますが、これはストレス環境に適応するための内因性のステロイド分泌の増加(および治療で用いられるステロイド投与)が影響している可能性があります。

 早産低出生体重児に対するNICU入院中のマッサージの効果を調べた過去の報告では、男児でマッサージが心拍数を減少させる(リラックスさせる)効果が認められたり、NICU入院中の成長において体重増加速度を変えずに体脂肪蓄積を防ぐ効果があることが示唆されています。このような効果には性差があるようですが、その明確なメカニズムはわかっていません。これらの研究は未だ一般化されたものではなく、日常診療でマッサージをすればよいと断言できるものではありませんが、マッサージが極低出生体重児に対するストレスを緩和することで、かれらの成長の質(体組成)を変えたのだとすれば、非常に興味深い結果です。NICU入院中の極低出生体重児に対するストレスの少ない環境を整えることが将来の発達や合併症予防につながるという考え方は、いわゆる「ディベロップメンタルケア」の概念とも通ずるところがあり、今後のDOHaDのひとつの方向性を示しているのかもしれません。今後の展開に期待したいと思tっています。


Moyer-Mileur LJ, et al. Massage improves growth quality by decreasing body fat deposition in male preterm infants. J Pediatr 2013; 162(3): 490-495.

Smith SL, et al. The effect of mechanical-tactile stimulation on the autonomic nervous system function in preterm infants. J Perinatol 2013; 33(1): 59-64

2016年06月06日