肥満は脂肪組織が過剰に体内に蓄積する状態で、皮下脂肪に比べて内臓脂肪の過剰蓄積が多くの合併症を引き起こすことがわかっています。肥満を評価するには、BMI、肥満度、腹囲などのさまざまな体格の指標がありますが、最近はBody
Adiposity Index (BAI: 臀囲/身長1.5乗 - 18)がの有用性が発表され、臀囲と身長の比が注目されています。そこで、小児肥満の体格を評価するにあたり、臀囲の意義について検討しました。
昭和大学病院と昭和大学豊洲病院小児科に通院している肥満児を対象とし、男児55例(平均年齢10.5歳、平均肥満度52.5%、平均腹囲85.4cm、平均臀囲87.7cm)、女児35例(年齢9.1歳、肥満度50.2%、腹囲77.7cm、臀囲85.1cm)について検討しました。また、内臓脂肪面積(VAT)と皮下脂肪面積との関連性については、臍高部CT画像を撮影した男児42例および女児23例を対象としました。血液データは身体計測と同時期の早朝空腹時に採血したものを用いました。
得られた結果は下記です。
① 肥満度との関連性について
臀囲、臀囲/身長、腹囲、腹囲/身長、腹囲/臀囲と肥満度との相関をみると、男女合わせて相関係数は各々r=0.410、0.855、0.558、0.879、0.397となり、臀囲/身長および腹囲/身長との相関が高くなりました。近似直線から肥満度を求めると、臀囲/身長が0.626で50.3%となり、腹囲/身長は0.588で肥満度50.1%となった(図1および2)。
② 体脂肪率との関連性について
体脂肪率との相関をみると、臀囲/身長、腹囲/身長が体脂肪率と相関が高いことがわかりました(r=0.592およびr=0.547)(図1および2)。
③ 内臓脂肪面積(VAT)との関連性について
VATとの相関は、腹囲(r=0.675)が最も高く、次に臀囲(r=0.569)、続いて腹囲/身長(r=0.416)となりました(図3)。
④ 血液検査の異常(脂質、肝機能、インスリン)との関連性について
血液検査異常との相関は腹囲が最も高く、臀囲/身長と合併症との関連性は低いことがわっかりました(図4)。
臀囲/身長および腹囲/身長は肥満度や体脂肪率、すなわち過体重との関連性が高い指標であることがあきらかとなりました。内臓脂肪蓄積や合併症の観点からすると、現時点では腹囲が最も良い指標と考えられることが今回の検討から明らかとなりました。
第43回日本小児栄養消化器肝臓学会で永原敬子先生が本研究結果について発表しました。また同内容についてはすでに論文化されています。さらに詳細を確認したい方は下記の文献をご確認ください。
Dobashi K, Takahashi K, Nagahara K, Tanaka D, Itabashi K.Evaulation of
Hip/Height Ratio as an index for adiposity and mtabolic complicartions
in obese children: Comparison with waist-related indices.J Atherosler Thromb
2016 Epub ahead of print