研究計画
- 日本の小児における皮膚終末糖化産物(AGEs)の基準値の設定と食由来AGEs量との関連
(2020年4月~開始予定) - 研究責任者:水野 克己
研究担当者:永原 敬子、越智 綾子、中野 有也
研究費:一般社団法人日本小児内分泌学会 未来開拓研究助成、一部は講座研究費
概要:終末糖化産物(Advanced Glycation Endo-products:AGEs)はグルコースなどの還元糖とタンパク質との間の非酵素的糖化反応の後期段階で生成する構造体の総称です。AGEsは不可逆性最終産物で分解されにくく、生体内に蓄積して組織に沈着し、老化物質として最近注目されています。AGEsはグルコース、グルコース代謝産物や分解物、フルクトースなどから生成されています。このためこれ らを多く含む清涼飲料水、スポーツドリンク、乳酸菌飲料やポテトチップスなどの加熱食品中には多量のAGEsが含まれています。食事中のAGEsが身体へ与える影響を明らかにすることは急務と言えます。 生体内AGEs量は皮膚AGEs値を測定することで推測することができ、非侵襲的に生体内AGEs量を推定することができます。
成人では年齢に比例して皮膚AGEs値が増加し、年齢別の基準値が明らかとなっています。一方、日本人小児を対象としたAGEs値の検討は今までになく、国際的にも年齢別の基準値は不明です。本研究では健康な日本人小学生の皮膚AGEs値を測定して年齢別に基準値を設定することを研究の第一の目標としています。さらに、食由来のAGEs量と皮膚AGEs値の関連を検討することを本研究の第二の目標とします。皮膚・皮下のAGEsは専用機器であるAGE Readerを用いて、無侵襲で簡単に測定することができます。
- (研究協力者募集)
本研究は東京都品川区立第二延山小学校の児童の中で、保護者の同意が得られた方を対象に行われます。
- (研究協力者募集)
- 極低出生体重児の体組成正常化および神経学的予後改善を目指した栄養管理の検討、ならびに早期リスク評価のための新規指標の検討(2019年7月からエントリー開始)
- 研究責任者:中野 有也
研究担当者:中野 有也
研究費:講座研究費、一部はFGHR臨床研究費
概要:極低出生体重児(出生体重が1,500g未満の児)は、学童期までに発達の遅れが生じやすく、自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動症、学習障害など発達障害の頻度が高いことが報告されています。また、成長のポテンシャルが低下することで成人期になっても小柄な人が多く、筋肉がつきにくく体脂肪がつきやすいなどの体質変化が生じる事が示唆されています。そのような体組成の影響もあり、成人期には糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病を発症するリスクが高いことが報告されており、また、慢性腎臓病を発症するリスクも高く、その一部は小児期から治療を要することがわかっています。極低出生体重児におけるこのような長期的な病気のリスクは、胎内環境に加えて、NICUでの成育環境や出生後の成長パターンが大きく関係し、特にNICUでの栄養管理や体組成の変化が、その後の発達や病気のリスクに密接に関わっていることがわかってきました。本研究は、極低出生体重児における将来の神経学的予後を改善させ、遠隔期の様々な疾病リスクを軽減させるためのNICUでの管理指針を明らかにするとともに、そのような疾病のリスクを早期から評価するための指標を明らかとし、よりよいフォローアップ指針を策定することを目的に立案されました。研究参加者にはNICU入院中からフォローアップ中の各種データを提供していただき、それをもとにNICUでの最良の治療方法やフォローアップ指針策定を検討いたします。
- (研究協力者募集)昭和大学病院NICUに入院する極低出生体重児が対象候補者となります。他院のNICUを退院し、昭和大学病院小児科でフォローアップされる極低出生体重児も途中からこの研究に参加することが可能です。
- 遺伝性心血管疾患における集中的な遺伝子解析及び原因究明に関する研究
(2019年1月からエントリー開始) - 研究責任者:永原 敬子
研究担当者:永原 敬子
研究費:小児科学講座研究費
概要:本研究は、金沢大学循環器病態内科学の山岸正和教授を主任研究者とする多施設共同研究です。この研究の目的は、遺伝性の心血管疾患(心筋梗塞など)を引き起こす病気を対象に、候補遺伝子や全ゲノム解析を行い遺伝子の変化を確認することです。昭和大学小児科では、内分泌班が中心となって、本研究の共同研究施設として、上記の遺伝子の心血管疾患を引き起こす家族性高コレステロール血症のある方(年齢制限はありません)を対象に血液検査を行い、金沢大学と連携して原因となる遺伝子の解析を行う研究を行っています。家族性高コレステロール血症といわれている、家族みんな高脂血症がある、小児期から高脂血症を指摘されている、など本症の疑いがあって本研究に興味がある方は是非ご相談ください。- (研究協力者募集)対象となるのは家族性高コレステロール血症の臨床診断基準を満たす患者さんとその血縁者の方です(年齢制限はありません)。対象が未成年の方の場合には代諾者の方より同意書を取得します。
- 在胎期間別臍帯血インスリン様成長因子の標準値についての検討
(2019年7月にエントリー開始) - 研究責任者:長谷部 義幸
研究担当者:長谷部 義幸
概要:インスリン様成長因子-Ⅰ(IGF-Ⅰ)は成長ホルモン刺激により末梢組織、主に肝臓で合成される物質です。IGF-Ⅰは、肝臓での蛋白合成を促進させるとともに、筋や軟骨の細胞を増殖させ、老化や寿命の制御にも関わることが明らかになっています。近年、周産期医療の分野でもIGF-Ⅰと周産期合併症の関連が注目されており、過去の報告から未熟児網膜症、慢性肺疾患、神経発達障害及び成長障害の発症に関連していることが知られています。未熟児は出生時から血中IGF-Ⅰが低値で推移することがわかっているため、それがこれらの周産期合併症の発症に関わっていると考えられるいます。そのため海外では、遺伝子組み換えヒトIGF-Ⅰ/IGF binding protein-3製剤を投与してこれらの周産期合併症を予防しようという試みがなされており、現在は本邦を含めた国際共同第Ⅱb/Ⅲ相試験が予定されています。しかし一方で、胎児期の各段階のIGF-Ⅰ標準値の報告は少なく、信頼性の高いデータは無いのが現状です。本研究は、日本人における在胎期間毎の臍帯血IGF-Ⅰ値の標準値を算出するため、昭和大学病院で出生しNICUに入院した児を対象に、臍帯血中のIGF-Ⅰ濃度を測定する研究です。
(研究協力者募集)昭和大学病院で出生しNICUに入院する児が対象候補者となります。 ※重大な基礎疾患のある児は対象から除外いたします。
- 人工肛門造設を行った極低出生体重児に対するヒト母乳由来の母乳強化物質
(Prolact+H2MF®)使用(2018年8月エントリー開始) - 研究責任者:水野 克己
研究担当者:中野 有也
概要:ほとんどすべての児にとって母乳栄養は最良の栄養法です。しかし出生体重が1,500g未満で出生した極低出生体重児では、生後早期の成長に必要な栄養を母乳のみから摂取することは難しく、母乳に母乳強化物質(本邦ではHMS-2®などを使用)を添加し栄養の強化を試みるのが通常です。しかし、人工肛門を造設している児に、本邦で一般的に使用されている母乳強化物質を使用した場合には“噴石”を形成し腸閉塞をきたすリスクがあることが報告されています。そのため、人工肛門を造設した極低出生体重児に対しては、母乳強化物質を使用することを控えることが一般的であり、その生後の成長はかなり緩徐で、理想的な成長とは程遠いのが現状です。また併用する静脈栄養の影響により胆汁うっ滞性肝機能障害のリスクが増加し、未熟児くる病を背景に骨折する症例が散見されるなど、栄養管理に難渋する例が多く経験されます。
現在本邦で使用されている母乳強化物質の蛋白は、ウシ蛋白(牛乳)由来であり、消化吸収が母乳単独使用例と比較すると悪くなってしまいます。海外ではヒト母乳から成分を取り出した母乳強化物質「ヒト母乳由来の母乳強化物質(Prolact+H2MF®)」を利用して母乳に加えており、本邦で市販されているウシ蛋白由来の母乳強化物質と比較して消化吸収がよいことが知られております。そのため、ヒト母乳由来の母乳強化物質を使用した場合には、体重増加の改善が見込まれるばかりか、ウシ蛋白由来の母乳強化剤を使用した場合と比較して、“噴石”形成のリスクも低くなると推測されます。しかし、日本ではまだヒト母乳由来の母乳強化物質の提供販売はなされていないのが現状です(本邦では、人工肛門造設がなされた症例ではありませんが、昭和大学江東豊洲病院で使用経験があり、良好な結果が得られています)。
本研究は、人工肛門造設を行った極低出生体重児に対してヒト母乳由来の母乳強化物質
(Prolact+H2MF®)を使用し、その効果と安全性を確認するものです。
- 超早産児に対する早期強化母乳栄養の効果に関する検討(2017年12月エントリー開始)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:宮沢 篤生
研究費:日本学術振興会科学研究費 基盤C
概要:極低出生体重児における栄養管理の基本は、生後早期からの積極的な栄養摂取により子宮外発育不全を回避し将来の神経学的予後を改善させようとするものです。そのためには生後早期から静脈栄養を併用し、経腸栄養では母乳栄養を基本として母乳強化パウダーを使用するのが一般的です。ただ、現在の我が国における母乳強化パウダー開始時期は、副作用など考慮し諸外国と比較して遅い傾向があります。そのことが生後早期の栄養摂取量を減少させてしまうため、これが児の成長に悪影響を与えている可能性があります。静脈栄養の中止時期に母乳強化パウダーの使用が十分でないと、その時期の栄養摂取量が不十分となるからです。本検討では、母乳強化パウダーをより早期から開始することで得られる効果を検証し、副作用などが増えないことを確認するための試験です。
- (研究協力者募集)
昭和大学病院NICUに入院する極低出生体重児が対象候補者となります。 - (研究協力者募集)
- 早産低出生体重児における脂肪細胞の数と大きさの変化が将来の疾病リスクに与える影響
(エントリー開始)
- 研究責任者:中野 有也
研究担当者:中野 有也
研究費:日本学術振興会科学研究費 若手B
概要:早産低出生体重児におけるメタボリックシンドロームなどの将来の疾病リスクは、脂肪組織のMal-development と密接にかかわっている可能性があります。実際、早産低出生体重児は分娩予定日に筋肉量が少なく体脂肪率が高いことが報告されている。この研究では、手術目的で入院する乳幼児を対象に手術時に少量の脂肪組織を採取し、早産低出生体重児と正期産正常体重児の間で脂肪組織の質(脂肪細胞の数や大きさ)を比較検討し、それに影響を与える因子、インスリン感受性への影響も合わせて評価します。
- (研究協力者募集)
対象1:以下の条件を満たす早産低出生体重児として出生した乳幼児(生後6か月~6歳)
対象2:以下の条件を満たす正期産正常体重児として出生したの乳幼児(生後6か月~6歳)
※ 昭和大学病院で外鼠径ヘルニアおよび臍ヘルニアで手術を施行予定の乳幼児(生後6か月~6歳)
- (研究協力者募集)
- 1,500g未満で出生した児に対する個別化した強化母乳栄養の臨床的検討(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:村瀬 正彦、鈴木 学
研究費:日本学術振興会科学研究費 基盤C
概要:母乳栄養は早産児を含む全ての新生児における栄養の基本です。しかし、栄養素の備蓄が少なく生後の急速な発育が望まれる極低出生体重児においては栄養素の不足が生じる可能性が高いため、これを補うために母乳強化パウダーを使用するのが一般的です.現在、日本で使用できる母乳強化パウダーにはHMS-1とHMS-2がありますが、母乳中に含まれる蛋白室などの成分は個人や時期によっても異なっているため,症例によっては母乳強化パウダーを使用しても必要な栄養摂取量に到達しないという問題点が指摘されています。本研究では、①母乳中の蛋白測定、②血液検査所見から栄養状態を評価、したうえで、蛋白質をさらに個別に強化することで得られる効果や問題点を検討することを目的としています。早産低出生体重児に対しての予定日までの栄養管理は、DOHaDと関連して将来の疾病リスクに大きく影響を与えると考えられますので、非常に重要な研究であると考えます。
- 極低出生体重児の超長期予後 ~フォローアップ施設を中心とした後ろ向き研究(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:中野 有也
研究費:厚生労働科学研究費補助金(分担研究:主任研究者 森臨太郎先生)
概要:極低出生体重児の救命率が向上するにつれ、その長期予後が注目されています。パイロットスタディである「極低出生体重児の思春期以降の予後に関する研究」をうけて、極低出生体重児の青年期の体格や健康状態、生活習慣病のリスク、学業の状態などを、多施設で検討することを目的に施行されている。この研究は昭和大学病院に加え、東京女子医科大学小児科、埼玉医大総合医療センター小児科、富山大学小児科、大阪府立総合医療センター新生児科、聖隷浜松病院新生児科、東京都立墨東病院新生児科と連携して遂行します。- ※最終的には、昭和大学病院/都立墨東病院/富山大学周産母子センターの3施設でエントリーを行いました
- (研究協力者募集)
対象1:昭和大学病院および各連携施設(富山大学周産母子医療センター、東京都立墨東病院新生児科)において1993年~1996年に1500g未満で出生し生存退院しえた極低出生体重児出身の青年
対象2:1993年~1996年に正期産正常体重児として出生した青年
ボランティア募集要項 → 本研究は終了いたしました。
- ※最終的には、昭和大学病院/都立墨東病院/富山大学周産母子センターの3施設でエントリーを行いました
- 早産児における出生後のアディポサイトカインの変動に関する臨床的研究(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:中野 有也
研究費:日本学術振興会科学研究費 基盤C
概要:早産低出生体重児では、将来メタボリックシンドロームを発症するリスクが高いと言われています.この研究は,35週未満で出生した早産低出生体重児を対象として、メタボリックシンドロームに関わる重要なホルモンであるアディポネクチン(脂肪から分泌される抗糖尿病,抗動脈硬化作用を有する物質)およびその分画と,レプチン(脂肪細胞から分泌され食欲やエネルギー消費を調整する物質)の出生後の推移を評価し,それに影響を与える因子を検討することを目的とした研究です。
業績:
①Nakano Y, Itabashi K, Dobashi K, Mizuno K. Longitudinal changes in adiponetin multimer levels in preterm infants. Early Hum Dev 2016; 95: 29-3
②Nakano Y, Itabashi K, Sakurai M, Aizawa M, Dobashi K, Mizuo K.Accumulation of subcutaneous fat, but not visceral fat, is a predictor of adiponectin levels in preterm infants at term,-equivalent age.Early Hum Dev 2014; 90: 213-7.
③Nakano Y, Itabashi K, Sakurai M, Aizawa M, Dobashi K, Mizuno K.Preterm infants have altered adiponectin levels atr term-equivalent age even if they do not present with extrauterine growth restriction.Horm Res Paediatr 2013; 80: 147-53. - 乳汁栄養の種類と乳幼児期の発育に関する研究(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:永原 敬子
研究費:厚生労働省科学研究費補助金(分担研究:主任研究者 瀧本秀美先生)
概要:小児期の適切な栄養は将来の生活習慣病発症予防に重要ですが、健康な日本人小児における乳汁栄養が与えるジェンダー効果は十分わかっていません。そこで健康な児童を対象に都内小学生308名の保護者にアンケート調査を実施し、以下のことを明らかにしました。生後4ヵ月時に母乳栄養のみの群(BF群)と人工栄養のみの群(FF群)について、男女別に、出生時、生後1、4、7、10、18、36ヵ月時の身長SDスコア(HSDS)、体重SDスコア(WSDS)、BMISDスコア(BMI-SDS)を比較し、関連する因子について統計学的に解析し検討しました【204名から回答が得られ、正期産正常出生体重で出生した157名を抽出、BF群71名(男児31名)とFF群30名(男児19名)で検討】。その結果、男児においてHSDSは生後4ヵ月で、WSDSは生後4から18ヵ月まで、BMI-SDSは生後7ヵ月から18ヵ月までBF群が有意に低値であり、女児では各月齢で両群間に有意な差を認めませんでした。また、重回帰分析の結果、BMI-SDSには生後4ヵ月時の栄養法のみが有意な関連要因でした。男児においてのみ、乳汁栄養の種類がその後の成長により強く影響し、乳汁栄養の選択は発育に対してジェンダー効果を有する可能性を示しました。
業績:
①Nagahara K, Dobashi K, Itabashi K. Feeding choice has a gender-associated effect on infant growth. Pediatr Int 2013; 55: 481-7. - 早産低出生体重児の将来の心血管イベント予測イベントに関する研究(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:清水 武
研究費:小児科講座研究費
概要:早産児は将来の冠動脈疾患や高血圧発症のハイリスク群に位置づけられますが、そのリスクを早期に評価するための指標はいまだ確立していません。この研究では動脈硬化の早期指標と考えられている intima-media thiclmess (IMT)を未就学児で評価しました。その結果、IMTは早産児で有意に厚くなることが確認されたため、早産児における動脈硬化の早期指標として、IMTの評価は有用である可能性があることがわかりました。
業績:
①Shimizu T, Fujii T, Iwasaki J, Nakano Y, Sakurai M, Miura F, Dobashi K, Mizuno K, Itabashi K. Abdominal aortic intima-media thickness in preschool children born preterm. Pediatr Cardiol 2014; 35: 121-5. - 肥満の初期段階におけるAICARの効果に関する検討 -MCP-1およびアディポネクチンに対する作用-(終了)
- 研究責任者:土橋 一重
研究担当者:永原 敬子
研究費:日本学術振興会科学研究費 基盤C
概要:肥満時には、脂肪細胞と浸潤マクロファージの相互作用で、脂肪組織の“炎症”が生じています。肥大化脂肪細胞が産生する単球走化活性因子1(MCP-1)は炎症を生じる初期段階に関わりますが、その分泌調節メカニズムについては、ほとんど判っていません。そこで、MCP-1分泌およびアディポネクチン産生に対するAMPキナーゼ(AMPK)経路の関与と影響をみるためAMPK活性化剤AICARの効果について検討しました。AICARは肥大化脂肪細胞からのMCP-1分泌を抑制し、アディポネクチン産生を亢進させました。その機序として、AMPK経路は関与しておらず、NFκB経路が関与していることが判りました。つまりこの研究では、AICARが肥満時の炎症を初期段階から抑制することと、それにNFκB経路が関与していることを明らかとしました。
①Nagahara K, Dobashi K, Ishikawa T, NakanoY, Abe Y, Tanaka D, Itabashi K. AICAR attenuates TNFα-induced inappropriate secretion of monocyte chemoattractant protein-1 and adiponectin in 3T3-L1 adipocytes. J Atheroscler Thromb 2016; 23(12): 1345-1354, 2016.
- 極低出生体重児における乳幼児期までのMRIを用いた脳容量の検討(進行中)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:渡邊 佳孝、小林 梢、滝元宏
研究費:講座研究費
概要:周産期医療の進歩によって多くの極低出生体重児が救命されるようになったが、死亡率の低下ほどには神経学的予後は改善していない。日常診療では発達予後のsurrogate markerとして頭囲測定が用いられているが、最近、MRIによる脳容量の定量的評価が注目されている。本研究では乳幼児期までの成長や栄養管理が脳容積に与える影響について、MRI画像と専用ソフトを用いて後方視的に評価する研究です。
業績:
①渡邊佳孝、滝元宏、板橋家頭夫、小林梢.極低出生体重児の出生予定日におけるMRIを用いた脳容量の検討.昭和学士会雑誌 2015年75巻2号
②渡邊佳孝、板橋家頭夫、滝元宏、宮沢篤生、中野有也、村瀬正彦、山川琢司.日本新生児成育医学会学会雑誌 2016;28: 31-38. - 早産低出生体重児における予定日周囲の血清ウロテンシンⅡに関する検討(終了)
- 研究責任者:中野 有也
研究担当者:中野 有也
研究費:森永奉仕会研究奨励金
概要:ウロテンシンⅡは近年注目されるようになった血管弾性の血液学的指標です.この血液マーカーは主に成人領域において,様々な心血管病変の病態生理に重要な役割を担う事が明らかとなっています.本研究は、早産低出生体重児を対象として予定日周囲に血清ウロテンシンⅡを測定し、周産期情報や予定日までの発育との関係性を検討することで、将来の疾病リスク予測に有用であるかを評価することを目的に施行された研究です。
- 臍帯血アディポネクチンと生後発育に関する研究(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:中野 有也
研究費:厚生労働省科学研究費補助金(分担研究:主任研究者 大関武彦先生)
概要:アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、抗糖尿病や抗動脈硬化作用をもつ善玉アディポサイトカインです。このホルモンは胎児期の成長にも深く関与していることが最近の研究からわかっています。正期産児を対象に臍帯血中のアディポネクチンがその後の乳幼児期の成長に与える影響を調査された研究です。
業績:
①Nakano Y, Itabashi K, Nagahata K, Sakurai M, Aizawa M, Dobashi K, Mizuno K, Tanaka D.Cord serum adiponectin is positively related to postnatal body mass index gain.Pediatr Int 2012; 54: 76-80.
2011年JSPE Award for an Excellent Presentation at ASPR受賞
- 極低出生体重児の思春期以降の予後に関する研究
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:相澤 まどか
研究費:厚生労働省科学研究費補助金(分担研究:主任研究者 藤村正哲先生)
概要:わが国では極低出生体重児の思春期以後の予後は明らかにされていない。本研究は、極低出生体重児の青年期(18~21歳)の体格や健康状態、生活習慣病のリスク、学業の状態などを検討することを目的に施行された研究です。
- 極低出生体重児の体組成正常化および神経学的予後改善を目指した栄養管理の検討、ならびに早期リスク評価のための新規指標の検討(2019年7月からエントリー開始)
- 研究責任者:中野 有也
研究担当者:中野 有也
研究費:講座研究費、一部はFGHR臨床研究費
概要:極低出生体重児(出生体重が1,500g未満の児)は、学童期までに発達の遅れが生じやすく、自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動症、学習障害など発達障害の頻度が高いことが報告されています。また、成長のポテンシャルが低下することで成人期になっても小柄な人が多く、筋肉がつきにくく体脂肪がつきやすいなどの体質変化が生じる事が示唆されています。そのような体組成の影響もあり、成人期には糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病を発症するリスクが高いことが報告されており、また、慢性腎臓病を発症するリスクも高く、その一部は小児期から治療を要することがわかっています。極低出生体重児におけるこのような長期的な病気のリスクは、胎内環境に加えて、NICUでの成育環境や出生後の成長パターンが大きく関係し、特にNICUでの栄養管理や体組成の変化が、その後の発達や病気のリスクに密接に関わっていることがわかってきました。本研究は、極低出生体重児における将来の神経学的予後を改善させ、遠隔期の様々な疾病リスクを軽減させるためのNICUでの管理指針を明らかにするとともに、そのような疾病のリスクを早期から評価するための指標を明らかとし、よりよいフォローアップ指針を策定することを目的に立案されました。研究参加者にはNICU入院中からフォローアップ中の各種データを提供していただき、それをもとにNICUでの最良の治療方法やフォローアップ指針策定を検討いたします。
- (研究協力者募集)対象となるのは昭和大学病院NICUに入院した極低出生体重児です。ただし他院のNICUを退院した後に昭和大学病院小児科でフォローアップされる場合も、途中から研究に参加することが可能です。
- 遺伝性心血管疾患における集中的な遺伝子解析及び原因究明に関する研究
(2019年1月からエントリー開始) - 研究責任者:永原 敬子
研究担当者:永原 敬子
研究費:小児科学講座研究費
概要:本研究は、金沢大学循環器病態内科学の山岸正和教授を主任研究者とする多施設共同研究です。この研究の目的は、遺伝性の心血管疾患(心筋梗塞など)を引き起こす病気を対象に、候補遺伝子や全ゲノム解析を行い遺伝子の変化を確認することです。昭和大学小児科では、内分泌班が中心となって、本研究の共同研究施設として、上記の遺伝子の心血管疾患を引き起こす家族性高コレステロール血症のある方(年齢制限はありません)を対象に血液検査を行い、金沢大学と連携して原因となる遺伝子の解析を行う研究を行っています。家族性高コレステロール血症といわれている、家族みんな高脂血症がある、小児期から高脂血症を指摘されている、など本症の疑いがあって本研究に興味がある方は是非ご相談ください。- (研究協力者募集)対象となるのは家族性高コレステロール血症の臨床診断基準を満たす患者さんとその血縁者の方です(年齢制限はありません)。対象が未成年の方の場合には代諾者の方より同意書を取得します。
- 在胎期間別臍帯血インスリン様成長因子の標準値についての検討
(2019年7月にエントリー開始) - 研究責任者:長谷部 義幸
研究担当者:長谷部 義幸
概要:インスリン様成長因子-Ⅰ(IGF-Ⅰ)は成長ホルモン刺激により末梢組織、主に肝臓で合成される物質です。IGF-Ⅰは、肝臓での蛋白合成を促進させるとともに、筋や軟骨の細胞を増殖させ、老化や寿命の制御にも関わることが明らかになっています。近年、周産期医療の分野でもIGF-Ⅰと周産期合併症の関連が注目されており、過去の報告から未熟児網膜症、慢性肺疾患、神経発達障害及び成長障害の発症に関連していることが知られています。未熟児は出生時から血中IGF-Ⅰが低値で推移することがわかっているため、それがこれらの周産期合併症の発症に関わっていると考えられるいます。そのため海外では、遺伝子組み換えヒトIGF-Ⅰ/IGF binding protein-3製剤を投与してこれらの周産期合併症を予防しようという試みがなされており、現在は本邦を含めた国際共同第Ⅱb/Ⅲ相試験が予定されています。しかし一方で、胎児期の各段階のIGF-Ⅰ標準値の報告は少なく、信頼性の高いデータは無いのが現状です。本研究は、日本人における在胎期間毎の臍帯血IGF-Ⅰ値の標準値を算出するため、昭和大学病院で出生しNICUに入院した児を対象に、臍帯血中のIGF-Ⅰ濃度を測定する研究です。
(研究協力者募集)昭和大学病院で出生しNICUに入院する児が対象候補者となります。 ※重大な基礎疾患のある児は対象から除外いたします。
- 人工肛門造設を行った極低出生体重児に対するヒト母乳由来の母乳強化物質
(Prolact+H2MF®)使用(2018年8月エントリー開始) - 研究責任者:水野 克己
研究担当者:中野 有也
概要:ほとんどすべての児にとって母乳栄養は最良の栄養法です。しかし出生体重が1,500g未満で出生した極低出生体重児では、生後早期の成長に必要な栄養を母乳のみから摂取することは難しく、母乳に母乳強化物質(本邦ではHMS-2®などを使用)を添加し栄養の強化を試みるのが通常です。しかし、人工肛門を造設している児に、本邦で一般的に使用されている母乳強化物質を使用した場合には“噴石”を形成し腸閉塞をきたすリスクがあることが報告されています。そのため、人工肛門を造設した極低出生体重児に対しては、母乳強化物質を使用することを控えることが一般的であり、その生後の成長はかなり緩徐で、理想的な成長とは程遠いのが現状です。また併用する静脈栄養の影響により胆汁うっ滞性肝機能障害のリスクが増加し、未熟児くる病を背景に骨折する症例が散見されるなど、栄養管理に難渋する例が多く経験されます。
現在本邦で使用されている母乳強化物質の蛋白は、ウシ蛋白(牛乳)由来であり、消化吸収が母乳単独使用例と比較すると悪くなってしまいます。海外ではヒト母乳から成分を取り出した母乳強化物質「ヒト母乳由来の母乳強化物質(Prolact+H2MF®)」を利用して母乳に加えており、本邦で市販されているウシ蛋白由来の母乳強化物質と比較して消化吸収がよいことが知られております。そのため、ヒト母乳由来の母乳強化物質を使用した場合には、体重増加の改善が見込まれるばかりか、ウシ蛋白由来の母乳強化剤を使用した場合と比較して、“噴石”形成のリスクも低くなると推測されます。しかし、日本ではまだヒト母乳由来の母乳強化物質の提供販売はなされていないのが現状です(本邦では、人工肛門造設がなされた症例ではありませんが、昭和大学江東豊洲病院で使用経験があり、良好な結果が得られています)。
本研究は、人工肛門造設を行った極低出生体重児に対してヒト母乳由来の母乳強化物質
(Prolact+H2MF®)を使用し、その効果と安全性を確認するものです。
- 超早産児に対する早期強化母乳栄養の効果に関する検討(2017年12月エントリー開始)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:宮沢 篤生
研究費:日本学術振興会科学研究費 基盤C
概要:極低出生体重児における栄養管理の基本は、生後早期からの積極的な栄養摂取により子宮外発育不全を回避し将来の神経学的予後を改善させようとするものです。そのためには生後早期から静脈栄養を併用し、経腸栄養では母乳栄養を基本として母乳強化パウダーを使用するのが一般的です。ただ、現在の我が国における母乳強化パウダー開始時期は、副作用など考慮し諸外国と比較して遅い傾向があります。そのことが生後早期の栄養摂取量を減少させてしまうため、これが児の成長に悪影響を与えている可能性があります。静脈栄養の中止時期に母乳強化パウダーの使用が十分でないと、その時期の栄養摂取量が不十分となるからです。本検討では、母乳強化パウダーをより早期から開始することで得られる効果を検証し、副作用などが増えないことを確認するための試験です。
- (研究協力者募集)
昭和大学病院NICUに入院する極低出生体重児が対象候補者となります。 - (研究協力者募集)
- 早産低出生体重児における脂肪細胞の数と大きさの変化が将来の疾病リスクに与える影響
(エントリー開始)
- 研究責任者:中野 有也
研究担当者:中野 有也
研究費:日本学術振興会科学研究費 若手B
概要:早産低出生体重児におけるメタボリックシンドロームなどの将来の疾病リスクは、脂肪組織のMal-development と密接にかかわっている可能性があります。実際、早産低出生体重児は分娩予定日に筋肉量が少なく体脂肪率が高いことが報告されている。この研究では、手術目的で入院する乳幼児を対象に手術時に少量の脂肪組織を採取し、早産低出生体重児と正期産正常体重児の間で脂肪組織の質(脂肪細胞の数や大きさ)を比較検討し、それに影響を与える因子、インスリン感受性への影響も合わせて評価します。
- (研究協力者募集)
対象1:以下の条件を満たす早産低出生体重児として出生した乳幼児(生後6か月~6歳)
対象2:以下の条件を満たす正期産正常体重児として出生したの乳幼児(生後6か月~6歳)
※ 昭和大学病院で外鼠径ヘルニアおよび臍ヘルニアで手術を施行予定の乳幼児(生後6か月~6歳)
- (研究協力者募集)
- 1,500g未満で出生した児に対する個別化した強化母乳栄養の臨床的検討(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:村瀬 正彦、鈴木 学
研究費:日本学術振興会科学研究費 基盤C
概要:母乳栄養は早産児を含む全ての新生児における栄養の基本です。しかし、栄養素の備蓄が少なく生後の急速な発育が望まれる極低出生体重児においては栄養素の不足が生じる可能性が高いため、これを補うために母乳強化パウダーを使用するのが一般的です.現在、日本で使用できる母乳強化パウダーにはHMS-1とHMS-2がありますが、母乳中に含まれる蛋白室などの成分は個人や時期によっても異なっているため,症例によっては母乳強化パウダーを使用しても必要な栄養摂取量に到達しないという問題点が指摘されています。本研究では、①母乳中の蛋白測定、②血液検査所見から栄養状態を評価、したうえで、蛋白質をさらに個別に強化することで得られる効果や問題点を検討することを目的としています。早産低出生体重児に対しての予定日までの栄養管理は、DOHaDと関連して将来の疾病リスクに大きく影響を与えると考えられますので、非常に重要な研究であると考えます。
- 極低出生体重児の超長期予後 ~フォローアップ施設を中心とした後ろ向き研究(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:中野 有也
研究費:厚生労働科学研究費補助金(分担研究:主任研究者 森臨太郎先生)
概要:極低出生体重児の救命率が向上するにつれ、その長期予後が注目されています。パイロットスタディである「極低出生体重児の思春期以降の予後に関する研究」をうけて、極低出生体重児の青年期の体格や健康状態、生活習慣病のリスク、学業の状態などを、多施設で検討することを目的に施行されている。この研究は昭和大学病院に加え、東京女子医科大学小児科、埼玉医大総合医療センター小児科、富山大学小児科、大阪府立総合医療センター新生児科、聖隷浜松病院新生児科、東京都立墨東病院新生児科と連携して遂行します。- ※最終的には、昭和大学病院/都立墨東病院/富山大学周産母子センターの3施設でエントリーを行いました
- (研究協力者募集)
対象1:昭和大学病院および各連携施設(富山大学周産母子医療センター、東京都立墨東病院新生児科)において1993年~1996年に1500g未満で出生し生存退院しえた極低出生体重児出身の青年
対象2:1993年~1996年に正期産正常体重児として出生した青年
ボランティア募集要項 → 本研究は終了いたしました。
- ※最終的には、昭和大学病院/都立墨東病院/富山大学周産母子センターの3施設でエントリーを行いました
- 早産児における出生後のアディポサイトカインの変動に関する臨床的研究(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:中野 有也
研究費:日本学術振興会科学研究費 基盤C
概要:早産低出生体重児では、将来メタボリックシンドロームを発症するリスクが高いと言われています.この研究は,35週未満で出生した早産低出生体重児を対象として、メタボリックシンドロームに関わる重要なホルモンであるアディポネクチン(脂肪から分泌される抗糖尿病,抗動脈硬化作用を有する物質)およびその分画と,レプチン(脂肪細胞から分泌され食欲やエネルギー消費を調整する物質)の出生後の推移を評価し,それに影響を与える因子を検討することを目的とした研究です。
業績:
①Nakano Y, Itabashi K, Dobashi K, Mizuno K. Longitudinal changes in adiponetin multimer levels in preterm infants. Early Hum Dev 2016; 95: 29-3
②Nakano Y, Itabashi K, Sakurai M, Aizawa M, Dobashi K, Mizuo K.Accumulation of subcutaneous fat, but not visceral fat, is a predictor of adiponectin levels in preterm infants at term,-equivalent age.Early Hum Dev 2014; 90: 213-7.
③Nakano Y, Itabashi K, Sakurai M, Aizawa M, Dobashi K, Mizuno K.Preterm infants have altered adiponectin levels atr term-equivalent age even if they do not present with extrauterine growth restriction.Horm Res Paediatr 2013; 80: 147-53. - 乳汁栄養の種類と乳幼児期の発育に関する研究(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:永原 敬子
研究費:厚生労働省科学研究費補助金(分担研究:主任研究者 瀧本秀美先生)
概要:小児期の適切な栄養は将来の生活習慣病発症予防に重要ですが、健康な日本人小児における乳汁栄養が与えるジェンダー効果は十分わかっていません。そこで健康な児童を対象に都内小学生308名の保護者にアンケート調査を実施し、以下のことを明らかにしました。生後4ヵ月時に母乳栄養のみの群(BF群)と人工栄養のみの群(FF群)について、男女別に、出生時、生後1、4、7、10、18、36ヵ月時の身長SDスコア(HSDS)、体重SDスコア(WSDS)、BMISDスコア(BMI-SDS)を比較し、関連する因子について統計学的に解析し検討しました【204名から回答が得られ、正期産正常出生体重で出生した157名を抽出、BF群71名(男児31名)とFF群30名(男児19名)で検討】。その結果、男児においてHSDSは生後4ヵ月で、WSDSは生後4から18ヵ月まで、BMI-SDSは生後7ヵ月から18ヵ月までBF群が有意に低値であり、女児では各月齢で両群間に有意な差を認めませんでした。また、重回帰分析の結果、BMI-SDSには生後4ヵ月時の栄養法のみが有意な関連要因でした。男児においてのみ、乳汁栄養の種類がその後の成長により強く影響し、乳汁栄養の選択は発育に対してジェンダー効果を有する可能性を示しました。
業績:
①Nagahara K, Dobashi K, Itabashi K. Feeding choice has a gender-associated effect on infant growth. Pediatr Int 2013; 55: 481-7. - 早産低出生体重児の将来の心血管イベント予測イベントに関する研究(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:清水 武
研究費:小児科講座研究費
概要:早産児は将来の冠動脈疾患や高血圧発症のハイリスク群に位置づけられますが、そのリスクを早期に評価するための指標はいまだ確立していません。この研究では動脈硬化の早期指標と考えられている intima-media thiclmess (IMT)を未就学児で評価しました。その結果、IMTは早産児で有意に厚くなることが確認されたため、早産児における動脈硬化の早期指標として、IMTの評価は有用である可能性があることがわかりました。
業績:
①Shimizu T, Fujii T, Iwasaki J, Nakano Y, Sakurai M, Miura F, Dobashi K, Mizuno K, Itabashi K. Abdominal aortic intima-media thickness in preschool children born preterm. Pediatr Cardiol 2014; 35: 121-5. - 肥満の初期段階におけるAICARの効果に関する検討 -MCP-1およびアディポネクチンに対する作用-(終了)
- 研究責任者:土橋 一重
研究担当者:永原 敬子
研究費:日本学術振興会科学研究費 基盤C
概要:肥満時には、脂肪細胞と浸潤マクロファージの相互作用で、脂肪組織の“炎症”が生じています。肥大化脂肪細胞が産生する単球走化活性因子1(MCP-1)は炎症を生じる初期段階に関わりますが、その分泌調節メカニズムについては、ほとんど判っていません。そこで、MCP-1分泌およびアディポネクチン産生に対するAMPキナーゼ(AMPK)経路の関与と影響をみるためAMPK活性化剤AICARの効果について検討しました。AICARは肥大化脂肪細胞からのMCP-1分泌を抑制し、アディポネクチン産生を亢進させました。その機序として、AMPK経路は関与しておらず、NFκB経路が関与していることが判りました。つまりこの研究では、AICARが肥満時の炎症を初期段階から抑制することと、それにNFκB経路が関与していることを明らかとしました。
①Nagahara K, Dobashi K, Ishikawa T, NakanoY, Abe Y, Tanaka D, Itabashi K. AICAR attenuates TNFα-induced inappropriate secretion of monocyte chemoattractant protein-1 and adiponectin in 3T3-L1 adipocytes. J Atheroscler Thromb 2016; 23(12): 1345-1354, 2016.
- 極低出生体重児における乳幼児期までのMRIを用いた脳容量の検討(進行中)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:渡邊 佳孝、小林 梢、滝元宏
研究費:講座研究費
概要:周産期医療の進歩によって多くの極低出生体重児が救命されるようになったが、死亡率の低下ほどには神経学的予後は改善していない。日常診療では発達予後のsurrogate markerとして頭囲測定が用いられているが、最近、MRIによる脳容量の定量的評価が注目されている。本研究では乳幼児期までの成長や栄養管理が脳容積に与える影響について、MRI画像と専用ソフトを用いて後方視的に評価する研究です。
業績:
①渡邊佳孝、滝元宏、板橋家頭夫、小林梢.極低出生体重児の出生予定日におけるMRIを用いた脳容量の検討.昭和学士会雑誌 2015年75巻2号
②渡邊佳孝、板橋家頭夫、滝元宏、宮沢篤生、中野有也、村瀬正彦、山川琢司.日本新生児成育医学会学会雑誌 2016;28: 31-38. - 早産低出生体重児における予定日周囲の血清ウロテンシンⅡに関する検討(終了)
- 研究責任者:中野 有也
研究担当者:中野 有也
研究費:森永奉仕会研究奨励金
概要:ウロテンシンⅡは近年注目されるようになった血管弾性の血液学的指標です.この血液マーカーは主に成人領域において,様々な心血管病変の病態生理に重要な役割を担う事が明らかとなっています.本研究は、早産低出生体重児を対象として予定日周囲に血清ウロテンシンⅡを測定し、周産期情報や予定日までの発育との関係性を検討することで、将来の疾病リスク予測に有用であるかを評価することを目的に施行された研究です。
- 臍帯血アディポネクチンと生後発育に関する研究(終了)
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:中野 有也
研究費:厚生労働省科学研究費補助金(分担研究:主任研究者 大関武彦先生)
概要:アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、抗糖尿病や抗動脈硬化作用をもつ善玉アディポサイトカインです。このホルモンは胎児期の成長にも深く関与していることが最近の研究からわかっています。正期産児を対象に臍帯血中のアディポネクチンがその後の乳幼児期の成長に与える影響を調査された研究です。
業績:
①Nakano Y, Itabashi K, Nagahata K, Sakurai M, Aizawa M, Dobashi K, Mizuno K, Tanaka D.Cord serum adiponectin is positively related to postnatal body mass index gain.Pediatr Int 2012; 54: 76-80.
2011年JSPE Award for an Excellent Presentation at ASPR受賞
- 極低出生体重児の思春期以降の予後に関する研究
- 研究責任者:板橋 家頭夫
研究担当者:相澤 まどか
研究費:厚生労働省科学研究費補助金(分担研究:主任研究者 藤村正哲先生)
概要:わが国では極低出生体重児の思春期以後の予後は明らかにされていない。本研究は、極低出生体重児の青年期(18~21歳)の体格や健康状態、生活習慣病のリスク、学業の状態などを検討することを目的に施行された研究です。