LGA児とは、Large for Gestational Age児の略で、出生時の体格が在胎期間に比してかなり大きい児をさしていいます。具合的には、出生体重および身長が、在胎期間ごとの標準値の90パーセンタイル以上の児のことをLGA児といいます。これは、在胎期間に対して出生体重や身長が小さい児(SGA:Small for Gestational Age)と真逆の概念です。一般に、低出生体重児(およびSGA児)では将来の糖尿病、高血圧、高脂血症など、いわゆる生活習慣病のリスクが高いことが知られていますが、LGA児も同様にそのリスクが高いことをご存知でしょうか?
過去の出生体重別の糖尿病罹患率に関する検討を見ると、出生体重を横軸、糖尿病罹患率を縦軸とした場合、罹患率はU字型を示すことが報告されています。すなわち、出生体重が小さいことと同じように、出生体重が大きすぎることも将来の糖尿病罹患のリスク因子になっているのです。以前の記事で紹介しましたが、最近報告された小児期の出生体重別の内臓脂肪蓄積の評価でも、同様の結果が得られているようです。
LGA児の生活習慣病リスクについては、低出生体重児やSGA児ほど十分検討されていません。SGA児では生後の成長の過程で、多くの児は主に乳幼児期に小さかった体格がある程度おいつくための成長が認められることがわかっています(catch-up growth)。SGA児ではこのcatch-up growthが急進なほど、将来の生活習慣病リスクが高いとされ、こういった疫学的事実がもとになって提唱された「適合・不適合パラダイム」がDOHaD学説の重要な概念となっています(詳細はトップページから"DOHaDとは"をご覧ください)。LGA児の多くは、乳幼児期に逆に成長が緩やかになり、AGA児の成長に近づくいわゆる”catch-down growth"があることがわかっています。適合・不適合パラダイムに当てはめて考えれば、これは不適合状態となりますので、疾病リスクはむしろ上昇してしまいそうですが、実際のところはLGA児のcatch-downは将来の生活習慣病リスクを減少させることが報告されています。このような事実は、適合・不適合パラダイムの矛盾点・問題点として一部認識されています。
低出生体重児の疾病リスクばかりが注目されていますが、LGA児も同様に将来の生活習慣病リスクが高いことは間違いないようですから、彼らの疾病リスクを減ずるための方策も今後もっと検討されていかなくてはならないでしょう。
参考文献)
Johnsson JW et al. Pediatr Obes 2015; 10: 77-83.
Taal HR, et al. Obesity 2013; 21: 1261-1268.