乳児期に乳汁を摂取することの意義(DOHaDと関連して)

 2016年6月23日(木)、日本大学病院で開催された第7回関東小児糖尿病フォーラムに参加してきました。東京医科歯科大学、糖尿病・内分泌・代謝内科教授の小川佳宏先生が、「DOHaD仮説の概念と分子機構」をテーマにご講演されました。小川佳宏先生は、DOHaD分野の研究に取り組む日本を代表する著明な先生の1人です。

 講演の内容はDOHaD仮説(学説)の一般的なお話に始まり、東京医科歯科大学で最近まで取り組んできた先進的なDOHAD研究のご紹介にすすみました。胎児期は臍帯を介して母体から栄養をもらいますが、この時期は栄養として摂取する脂質が比較的少ない時期です。乳汁中には脂肪が豊富に含まれていますので、乳児期は脂質摂取が多くなり、離乳食がはじまり離乳が完了するにしたがって、脂質に変わって糖質の摂取が多くなります。このようなダイナミックな栄養環境の変化、そして乳児期に豊富な脂質に暴露されることこそが、児のエピゲノム変化に関与し将来の疾病リスクに関与するのではないかという立場に立って、マウスを用いた研究を開始したとのお話の導入でした。

 非常に専門的で難しいお話でしたが、ものすごく簡単にまとめると、脂肪燃焼に関わる蛋白質(PPARα)の遺伝子が乳幼児期の活性化されると、それはエピゲノム変化(当該部位の脱メチル化)によって将来に記憶されるメカニズムを実際にマウスで示したというふうに理解しました。乳児期に脂質に富んだ乳汁(一般に脂質は母乳中に多く含まれる)を摂取することでこのような変化が誘導されるのだとすれば、この時期の栄養が将来の疾病リスクに関与するメカニズムのいったんを解明したと考えられ、大変今日深い内容です。

ちょうど論文が出たころ、ニュースにもなっていたのを思い出しました。
関連する文献、ニュースなどリンクしておきますのでご興味のある方はご参照ください。

2016年06月24日