テロメア短縮とDOHaD

 ”テロメア”というものをご存知でしょうか?テロメアは真核生物がもつ染色体の末端にある構造物で、特徴的な繰り返し配列をもつDNAと様々なたんぱく質からなっています。このテロメアは細胞の分裂に従って短縮することがわかっており、これが細胞の老化、ひいては個体の老化に関係していることが示唆されています。最近はDOHaD領域においても、テロメア短縮と将来の疾病リスクとの関係に注目した研究がなされるようになってきています。テロメアのサイズは成人期の様々な慢性疾患とも関係していることが示唆されているからです。また胎児期の子宮内環境の悪化は酸化ストレスなどと関連していますが、これがテロメア短縮と関連していることを示唆する報告もあります。



 実際に過去の動物を用いた実験によれば、子宮内発育不全後の急進な成長によりテロメアは短縮する傾向がるようです。ヒトを対象とした研究では、低出生体重がテロメアの長さに影響を与えることには否定的な意見もありいまだ結論はだされていませんが、今後議論がなされていくことになるでしょう。一般にDOHaD学説のメカニズムは、遺伝子の発現部位を調節するエピゲノム変化によって説明されていますが、これで低出生体重児における将来の疾病リスクなど、DOHaD学説における全ての現象を説明できるわけではありません。”テロメア”はDOHaD学説のメカニズムを説明するための新たな視点として、今後さらなる研究が進んでくる分野となるかもしれません。

 

参考文献)
Marchetto NM, et al. Prenatal stress and newborn telomere length. Am J Obstet Gynecol 2016; 215(1): 94.e1-8.

 

2017年11月27日