早産低出生体重児は、将来高血圧や慢性腎臓病に罹患しやすいことがわかっています。その理由・メカニズムは完全にわかっているわけではありませんが、早産低出生体重児では腎臓の最小単位であるネフロンの数が生涯少ないことがわかっていて、それがリスク形成に関わっていることが推測されています(Brennerが提唱 hyperfiltration理論)。
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低出生体重児における慢性腎臓病や高血圧リスクが生じるメカニズムを明らかにし、より早期に介入することで予後を改善させようとする活動が世界的に進んでいます。昨年、ヨーロッパ中心のグループ(Low Birth Weight and Nephron Number Working Group)から、低出生体重児における慢性腎臓病や高血圧リスクと関連した様々な提言がなされました。ここではその提言のごく一部を紹介したいと思います。
・在胎期間・出生体重などの周産期歴を必ず記録すべきである。
・低出生体重児、早産児、発育不全児では、定期的に高血圧、過度な体重増加、アルブミン尿、高血糖の有無をモニタリングすべきである。
【今後に取り組むべき研究】
・ネフロン数や機能腎の量的評価方法を確立
・早産低出生体重児の腎機能フォローアップガイドラインを確立
フォローのタイミング、クレアチニン or シスタチンCなど
・高血圧または腎機能障害のある極低出生体重児に対して、6歳時からACE阻害剤を開始する無作為化比較試験を考慮
・将来のハイリスク児を予測する新規早期指標をみつけること
低出生体重児における慢性腎臓病リスクには、前述のようにネフロン数が少ないことが大きく関係していることが推測されています。ただ、ネフロン数は出生体重および出生時の在胎期間と比例することがわかっていますが、同じくらいの在胎期間・体重で生まれた児の中にどうして慢性腎臓病を発症する人としない人がいる理由が十分わかっていません。また、最近の報告では、日本人はもともとネフロン数が少ない傾向がることが示唆されています。今後日本でもハイリスク児を見逃されないためのシステム作りが望まれます。
参考文献)
1) Low Birth Weight and Nephron Number Working Group. The impact of Kidney
Development on the life Coure: A consensus Document for Action. Nephron
2017; 136(1): 3-49.
2) Low Birth Weight and Dephron Number Working Group. A developmental approach to the prevention of hypertension and kidney disease: a report from the Low Birth Weight and Nephron Number Working Group. Lancet 2017; 390(10092): 424-428.