日本DOHaD学会からの提言「我が国の低出生体重児の割合増加」に対する喫緊の対応の必要性

 今年の8月に有名な科学雑誌であるScience上で、日本における出生時体重の減少が、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の長期的なリスクを高めることにつながることへの危惧、これに対して早急な対応が必要であるという警笛がならされました。

 低出生体重児が糖尿病や高血圧などの生活習慣病にかかりやすいことは広く知られつつありますが、日本における成人の平均身長が1980年以降低くなっており、低出生体重児の増加とこれが関連しているのではないかという議論が最近なされていて、改めて日本の現状への危惧がとりあげられたという流れがありました。一部、Science誌の誤解はあるものの(詳細は下記の提言をご覧ください)、日本における出生体重の低下が与える多方面への弊害を危惧する声は、日本を超えて海外においても注目されており、日本社会での認識の低さを考えると日本人研究者としては複雑な思いです。

 日本において出生体重が低下してきた背景には様々な要因がありますが、日本人女性のスリム志向による栄養摂取量不足の問題が大きな理由になっていると考えられています。世界的に見れば、世界中の多くの国で妊娠女性の過度な体重増加(肥満など)がむしろ問題になっている一方で、日本では妊娠女性のやせが問題になっているのです。ただこの問題を解決することは大変難しい部分があります。仮に妊娠女性が生まれてくる赤ちゃんのためにしっかりとした食事をとろうと思っても、それまで獲得してきた食習慣を大きく変えることは難しく、「そんなに食べれない」ということになります。結局は少なくとも思春期くらいまで遡って、行き過ぎたスリム志向と関係したリスクを啓発し、普段からの食習慣を変えていかなければ問題は解決しないのかもしれません。非常に難しい問題ですが、研究者だけではなく、行政を含めた多方面の活動を結集してこの問題にとりくんでいかなくてはいけません。そのためには、国民の間に広くそのリスクがもっとひろく知れ渡り、「どうにかしなくてはいけない」という議論がなされなければならないのだと思います。昭和大学DOHaD班の活動がその一助になることができれば・・・・との思いです。
 

 

2018年12月18日