安次嶺馨先生の教育講演を聴いて 第7回日本DOHaD学会

第7回日本DOHaD学会で安次嶺馨先生の教育講演を聴いて

教育講演2
題名:日本のDOHaDの原点は沖縄にある
演者:安次嶺 馨 先生(沖縄県立中部病院ハワイ大学卒後医学臨床研修事業団)

 

【発表内容の紹介(聴講して感じたこと)」

 DOHaD学説は多くの疫学的調査の結果をもとに発展してきた概念です。その中でも、"Dutch Famine"はDOHaD研究に携わるものにとってに非常に有名な出来事です。Dutch Famine(オランダの大飢饉)では、第二次世界大戦末期にナチスドイツによってなされた出入港禁止処置のため、オランダの一部の地域で極度の食糧難に陥り、住民は約半年間にわたって極度の低栄養ストレスに曝されました。DOHaD研究では、このような低栄養ストレスに暴露された妊婦から出生した児がその後どのような転機をたどったかを調査することで、様々な知見が集積してきたのです。

 安次嶺馨先生のお話しでは、このようなDOHaDと関わるような問題が、日本の沖縄でも生じているというお話しでした。沖縄はこれまで日本の中でもっとも”長寿”の地域であることが知られていました。しかし戦時中の低栄養環境と戦後のいち早い食事の欧米化を原因として、現在戦時中に受胎した児の平均寿命は、医療水準が以前よりずいぶん向上したにもかかわらず、他県よりは短くなってきているようです。このような事実は海外で問題視され検証されている"Dutch Fmiine”や"Chinese Famine"と比較して、日本人のDOHaD研究者の中で認知されているものの、問題意識を強く持っている研究者はそう多くないのが現状です。沖縄が現在直面している問題は、将来日本全体がたどる可能性がある道であるという言葉が非常に印象的でした。このような事実は、DOHaD研究に携わるもののみならず、日本全体の問題として社会が認識してかなくてはいけないと強く感じました。

2018年08月17日