倹約表現型の本質とは

「倹約表現型」という用語をご存じすか?
これはまさに燃費の良い体質(=太りやすい体質)のことを指す専門用語です。


低出生体重児はこの「倹約表現型=太りやすい体質」をもっているといわれています。
胎児期に低栄養環境に暴露された胎児は、生まれた後も低栄養環境に適合していけるようにエネルギーを無駄遣いしない燃費の良い体質を獲得して生まれてくるといわれています。これはまさにDOHaD学説の考え方です。

倹約表現型、つまり太りやすい体質の本質とは、以下のような特徴と関係しているのではないかと考えられています。

1. 成長のポテンシャルの低下

低出生体重児は低身長のリスクがあることがわかっています。
体が大きくなるとその体を維持するのにより多くのエネルギーが必要になります。
成長のポテンシャル低下(体を大きくしないこと)は倹約型の体質にとって重要です。

2.体組成の変化

低出生体重児では筋肉がつきにくく、体脂肪がつきやすい傾向があることが知られています。
筋肉量を少なくすることは、基礎代謝を減少させることにつながるため、エネルギーを倹約するのに有利です。その分余剰となったエネルギーにより脂肪蓄積を生じやすくする(体脂肪率が上昇しやすい)傾向があります。

このような特徴は、将来の生活習慣病リスクと密接にかかわっているのではないかと考えられています。低出生体重児では運動機能や生活の活動性が平均的には低下していることを示す報告もあり、低出生体重児では小児期からしっかりとした運動習慣をつけて、しっかりと筋肉をつけていくことが将来の生活習慣病予防につながる可能性があります(詳細はまだわかっていません)。

 

参考文献)

Nakano Y.
Adult-onset diseases in low birth weight infants: association with adipose tissue maldevelopment
J Atheroscler Thromb 2019; PMID 31866623.

中野有也.
【DOHaD】DOHaDからみた体組成の重要性
日本新生児生育医学会雑誌 2019; 31: 337-340.

2020年01月10日