帝王切開で出生した児の肥満リスク

 帝王切開で出生した児は将来肥満になりやすいという報告が数多く存在することをご存じだろうか?
最近のreview articleによると、帝王切開で出生した児は経腟分娩で出生した児と比較して、小児期に肥満となるリスクが34%高いという。このリスクは母体の妊娠前体重などいくつかの交絡因子を調整しても残存することが示唆されている。
 このようなリスクが生じるメカニズムの詳細はいまだ解明されていないが、帝王切開で出生した児と経腟分娩で出生した児の腸内細菌叢の違いがそれに関連していると考える研究者は多い。最近、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)は様々な疾病発症のリスクと関連していることが示唆されており、帝王切開で出生した児が獲得する腸内細菌叢は、経腟分娩で出生した児が獲得するそれとは異なっていることも指摘されている。実際、抗菌薬投与と将来の肥満リスク増大を指摘する報告もあり、これは同様に抗菌薬投与が腸内細菌叢を変化させることが原因の一つであると推測されている。
 早産低出生体重児は一般に帝王切開で出生する頻度が高い。また、抗菌薬を使用する機会も多く、それらも将来の疾病リスクと関連しているのかもしれない。医療上必要な場合には当然いたしかたないが、安易な理由で帝王切開を選択することが将来の児の疾病リスクにまで影響を与えるのだとすれば、慎重に適応を判断すべきであるといえるだろう。

Kuhle S, Tong OS, Woolcott CG. Association between caesarean section and childhood obesity: a systematic review and meta-analysis. Obes Rev 2015; 16(4): 295-303.

 

2016年05月17日