特にDOHaD学説と関連でこのアディポシティリバウンドが注目されている理由は、アディポシティリバウンドの開始が早いほど肥満になるリスクが高く、若年成人でメタボリックシンドロームや糖尿病を発症するリスクが高いことが示唆されているからです。日本においても独協医科大学小児科の前教授である有阪先生らの検討において、アディポシティリバウンドが早い幼児ほど、思春期年齢において過体重や関連指標の異常をきたしやすいことが明らかになっています。
このようなアディポシティリバウンドが生じる時期の変化は、出生体重や子宮内環境の影響をうけていることが示唆されていますが、その詳細なメカニズムはわかっていません。しかし、リスクのある人を早期にみつけ、介入によって発症リスクを減少させようという試みは先制医療そのものであり、DOHaDを臨床につなげていくという視点で考えた場合に重要な標的になりうる概念であると思います。実際に、那須赤十字病院小児科/独協医科大学小児科の市川剛先生らは、3歳までのBMIの推移から心血管代謝疾患リスクが高い症例を予測し、肥満を予防するための介入を試みる研究を行っているようですので、その介入効果に期待したいところです。
一方で早産低出生体重児(特に極低出生体重児)におけるアディポシティリバウンドの有用性については、さらに詳細な検討が必要なのかもしれません。・・・・というのも、早産低出生体重児(特に極低出生体重児)は乳幼児期に小柄な子が多く、小柄な子のBMIでは肥満(脂肪蓄積)を過小評価してしまうリスクがあることを指摘する声があるからです。また、最近の報告では早産低出生体重児においては体組成の変化があり、その影響によりBMIが生後早期の脂肪蓄積を反映しにくいことが報告されています。このあたりの詳細がさらに判明すれば、早産低出生体重児の健診におけるアディポシティリバウンド評価の活用が現実的になってくるのではないかと思われます。
この分野については、市川剛先生には第53回日本周産期学会学術集会のDOHaD関連シンポジウムでご講演いただきましたし、第6回日本DOHaD学会では有阪治先生のご講演もありました。関連する学会の情報や記事については下記をどうぞ。
参考文献)
1. Koyama S, Ichikawa G, Kojima M, et al. Adiposity rebound and the development of metabolic syndrome. Pediatrics 2014; 133(1): e114-119.
2. Arisaka O, Sairenchi T, Ichikawa G, Koyama S. Increase of body mass index (BMI) from 1.5 to 3 years of age augments the degree of insulin resistance corresponding to BMI at 12 years of age. I Pediatr Endocrinol Metab 2017; 30(4): 455-457.