出生体重と将来の内臓脂肪蓄積との関係

 メタボリックシンドロームは、糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病に複数罹患した状態です。その背景には内臓脂肪蓄積を介したインスリン抵抗性(血糖を下げるインスリンが効きにくくなる状態)があることがわかっています。内臓脂肪の評価は臍部CT(Fat-scan)で評価することができますが、実際にはより簡易的な方法として、内臓脂肪蓄積を反映する腹囲を評価することで診断されます。小児では腹囲(絶対値)での評価の場合には過小評価してしまう可能性があるため、下記のような基準が用いられています。

腹囲の基準①を満たしたうえで、②~④のうち2つ以上を満たす場合に診断
① 腹囲の増加(中学生80cm以上、小学生75cm以上ないし腹囲/身長比0.5以上)
② 中性脂肪が120mg/dal以上ないしHDLコレステロールが40mg/dl未満
③ 収縮期血圧125mmHg以上ないし拡張期血圧70mmHg未満
④ 空腹時血糖100mg/dl以上
注)採血が食後2時間以降である場合は中性脂肪150mg/dl以上、血糖100mg/dl以上を基準としてスクリーニングを行う

 低出生体重児は生活習慣病罹患のリスクが高いことがわかっていますが、出生体重と内臓脂肪蓄積の関係性にはどのような傾向があるのでしょうか?過去の検討によると、やはり低出生体重児では内臓脂肪蓄積が生じやすいようで、成人において出生体重は内臓脂肪量と負の相関を示すとの報告が散見されます1,2)。早産低出生体重児においては、分娩予定日には内臓脂肪が増加しているとの報告もあります3)。ごく最近の別の報告によると、思春期の評価で内臓脂肪量と出生体重児の関係はU字型を示すようです4)。すなわち、出生体重が大きくても小さくても内臓脂肪蓄積は生じやすくなることが示唆されます。そしてインスリン抵抗性もそれと同様に、出生体重を横軸として関係性を見た場合にU字型を示すことが報告されています。低出生体重児における内臓脂肪蓄積のメカニズムは十分わかっていませんが、そのような傾向があることは間違いなさそうです。日本人でも同様の傾向が認められるかはいまだわかっておらず、今後の課題となるかもしれません。

1) Rolfe Ede L, Loos RJ, Druet C, et al. Association between birth weight and visceral fat in adults. Am J Clin Nutr 2010; 92 :347-52.
2) Ronn RF, Smith LS, Andersen GS, et al. Birth weight and risk of adiposity among adult Inuit in Greenland. PLoS One 2014; 9: e115976.
3) Uthaya S, Thomas EL, Hamilton S, et al. Altered adiposity after extremely preterm birth. Pediatr Res 2005; 57: 211-5.
4) Stanfield BK, Fain MB, Bhatia J, et al. Nonlinear relationship between birth weight and visceral fat in adolescents. J Pediatr 2016; 174: 185-92.

 

2016年10月17日