人工肛門造設を行った極低出生体重児に対するヒト母乳由来の母乳強化物質(Prolact+H2MF®)の使用

研究責任者:水野 克己
研究担当者:中野 有也
概要:ほとんどすべての児にとって母乳栄養は最良の栄養法です。しかし出生体重が1,500g未満で出生した極低出生体重児では、生後早期の成長に必要な栄養を母乳のみから摂取することは難しく、母乳に母乳強化物質(本邦ではHMS-2®などを使用)を添加し栄養の強化を試みるのが通常です。しかし、人工肛門を造設している児に、本邦で一般的に使用されている母乳強化物質を使用した場合には“噴石”を形成し腸閉塞をきたすリスクがあることが報告されています。そのため、人工肛門を造設した極低出生体重児に対しては、母乳強化物質を使用することを控えることが一般的であり、その生後の成長はかなり緩徐で、理想的な成長とは程遠いのが現状です。また併用する静脈栄養の影響により胆汁うっ滞性肝機能障害のリスクが増加し、未熟児くる病を背景に骨折する症例が散見されるなど、栄養管理に難渋する例が多く経験されます。現在本邦で使用されている母乳強化物質の蛋白は、ウシ蛋白(牛乳)由来であり、消化吸収が母乳単独使用例と比較すると悪くなってしまいます。海外ではヒト母乳から成分を取り出した母乳強化物質「ヒト母乳由来の母乳強化物質(Prolact+H2MF®)」を利用して母乳に加えており、本邦で市販されているウシ蛋白由来の母乳強化物質と比較して消化吸収がよいことが知られております。そのため、ヒト母乳由来の母乳強化物質を使用した場合には、体重増加の改善が見込まれるばかりか、ウシ蛋白由来の母乳強化剤を使用した場合と比較して、“噴石”形成のリスクも低くなると推測されます。しかし、日本ではまだヒト母乳由来の母乳強化物質の提供販売はなされていないのが現状です(本邦では、人工肛門造設がなされた症例ではありませんが、昭和大学江東豊洲病院で使用経験があり、良好な結果が得られています)。 本研究は、人工肛門造設を行った極低出生体重児に対してヒト母乳由来の母乳強化物質(Prolact+H2MF®)を使用し、その効果と安全性を確認するものです。

(研究協力者募集)
対象:昭和大学病院NICUに入院中の極低出生体重児(1,500g未満出生)の中で人工肛門を造設した児
★重大な基礎疾患などを有さず担当医が候補者として適格と判断し方に限定します

2018年08月06日